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2010-02-20 14:50
中国で話をするとき、留意したいこと
池尾 愛子
早稲田大学教授
私が初めて中国に行ったのは1992年頃で、中国社会科学院経済研究所の人たちが北京で組織した第1回東アジア国際学術シンポジウムに参加するためであった。招待状は日本経済思想史研究家の故塚谷博通氏(国学院大学)宛てに届いたのであるが、氏が高齢であったため、他の候補者探しがあり、結局、私が代理でシンポジウムに参加することになったのである。当時、中国を訪問する日本人研究者は限られていたので、中国に行くにあたって、他の同僚からいろいろと助言をいただいた。自宅でファクスを受信できた方がよいと言われて、ファクスを設置してファクス番号を連絡すると、はたして最初に届いたファクスは中国からのものになった。また、同僚の信頼できる友人たちに北京空港で出迎えていただくことにもなった。
その後、同じ大学の中国問題研究者たちから、キャンパスを訪問中の中国人研究者たちを数多く紹介され、様々な助言をいただくとともに、相談も受けた。中国問題研究者しか中国に行かないので、中国人研究者は海外研究者との交流の機会が限られている。中国人研究者にとって、海外の中国問題研究者と接する機会は頻繁にあっても、それでは彼ら(中国人研究者)のための研究交流にはならない。だから、中国問題研究者ではない私が、研究交流のために中国に行けないか、という相談であった。そして議論した結果、私が中国で話す内容は、学会で発表するものや大学院の専門講義で話すものが適当であろう、ということになった。つまり、中国向けの話は断じて不要であり、研究を基礎にした発表や専門講義と同じ内容にすべきである、またそうであれば、私にも負担にならないわけである。加えて、「俄か中国問題研究者には決してならない」と約束する一方で、中国訪問レポート(研究ではない)に限っては書いてよい、という同意を取り付けた。
移籍後になるが、エネルギー経済学だけは、2004年の北京フォーラムのために初めて取り組むことになった。そのときは「アセアンと日本のエネルギー経済学」について通常とほぼ同じ研究手法を用いて論文を作成し、逆に日本での専門講義などに取り入れることにした。というわけで、私が中国で話す内容は、中国以外で話す内容と一致するという状況は、確保し続けている。また、同じ方針は、中国で研究発表される方々に勧めたい。
21世紀になり、中国でも訪問研究者や国際会議の数が増えたようだ。もう数年前になるが、中国での歓談の席で、中国の人たちにとって、国際会議の開催や参加に都合のよい時機はいつか、が話題になったことがある。毎年事情が違ったり、会議の位置づけによっても変わったりするようだった。ただし、国慶節休暇のあとに国際会議が設定されると、多くの参加者を歓迎するのは困難であると聞いた。また、会議の目的をみると、研究交流よりむしろ、会議を開催すること自体に意義があると勘違しているような学者がいるようだ。後者のケースは、どの国の研究者にとっても迷惑であるに違いない。
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