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2010-02-17 11:32
(連載)ウクライナ大統領選挙についての所感(2)
茂田 宏
元在イスラエル大使
しかし経済面ではロシアには負担になる可能性がある。ウクライナは世界金融危機で2008年、GDPの約20%を失い、通貨フリブナは80%下落した。対外債務は、私的なものを加えるとGDPの100%になる状況にある。鉄鋼など主要輸出品の輸出は減退し、大幅に回復する見込みは小さい。IMFが改革の遅れを理由に融資を止めているなかで、ロシアがウクライナ支援をせざるをえなくなることが予想される。これは負担ではあるが、同時にロシアの影響力強化につながるだろう。
キルギスの「チューリップ革命」(2005年)、グルジアの「バラ革命」(2003年)、ウクライナの「オレンジ革命」は、旧ソ連諸国の民主化の動きとされてきたが、「オレンジ革命」がこういう形で終わったこと、「チューリップ革命」もキルギスの民主化を達成したとは言えないことは、旧ソ連圏諸国での民主化の展望に悪い影響を与えるだろう。「オレンジ革命」はウクライナの政治家の権力闘争のために挫折した。ロシアにおける権威主義の復活もあり、今後は、権威主義的な風潮が強くなると思われる。ユーシェンコ大統領のもとで、ウクライナは2008年のグルジア・ロシア紛争の際に、グルジアに対空兵器などを供給したが、サアカシュビリのグルジアは、この大統領選挙の結果を受けて、孤立感を強めると思われる。
ウクライナのNATO加盟問題は、もう問題ではなくなるだろう。ユーシェンコは推進していたが、ウクライナ人の世論の多数はNATO加盟を支持していなかった。ウクライナ人の多数はEU加盟を欲しているので、欧州との関係を良好なものに保つ努力は、今後ともすると思われる。
ウクライナは国土面積、人口でフランスと同等な大国である。その動向は、欧州の力のバランスに影響を与える。ソ連邦の崩壊は、何よりもウクライナのソ連からの離脱を引き金として起こった。西側としては、ウクライナを独立した主権国家として存続せしめることが重要である。勢力圏発想をするロシアがこれを再度併呑しないように焦点をあわせることが、現時点では重要であろう。(おわり)
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(連載)ウクライナ大統領選挙についての所感(1)
茂田 宏 2010-02-16 21:15
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茂田 宏 2010-02-17 11:32
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