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2009-05-08 08:21
(連載)日本のソフト・パワーとしてのサブカルチャー(1)
水野 勝康
特定社会保険労務士
「ソフト・パワー」という考えがある。ハーバード大学大学院ケネディ・スクール教授で、アメリカの次期駐日大使に内定しているジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニアが提唱したものである。国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことであるとされている。
「ソフト・パワー」の対義語である「ハード・パワー」は、国の軍事力や経済力に代表されるまさに「力」であり、比較的分かりやすいものである。これに対して「ソフト・パワー」は、一見するとわかりにくい。数字できっちり示すことができないものである。
しかしながら、今後日本が国際社会で存在感を示してくためには、「ハード・パワー」とともに「ソフト・パワー」も重視していかなければなるまい。我が国は憲法によって軍事力の行使は極めて制約されている。また、現実問題として今の自衛隊の持つ兵力は、自国の防衛で手一杯で、仮に憲法の制約がなくなったとしても、日本の懐具合から考えると、アメリカのような武力を誇示した外交などできそうもない。中国も韓国も着々と軍拡を進める一方、日本は自衛隊の任務の多様化に反比例するかのように、正面装備は縮小傾向にある。また、経済力も、かつての力を失いつつある。日本は相変わらず経済大国ではあるかもしれないが、特に周辺諸国に比して強力な経済を持っているとは最早言えない。
「ハード・パワー」の勝負に持ち込まれたら、我が国は国際社会で埋没するおそれがある。「ソフト・パワー」は「ハード・パワー」を完全に代替できるものではもちろんないが、日本の国力を維持し、国際社会で一定の地位を確保するためには、「ソフト・パワー」も重視していかなければならないだろう。では、日本のイメージを向上させ、他国の支持や理解を得られるようなものとして、何があるだろうか。(つづく)
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