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2009-04-22 07:55
政界明暗逆転の怖い側面
杉浦正章
政治評論家
あの「麻生叩き」は一体何だったのだろうか、と最近思う。かねてからホテルのバー通いも、“誤読”も、政治家としての首相の本質批判とすべきでないと主張してきたが、マスコミのそういった批判がぱたっと止まった。端的に形容するなら、「小沢続投効果」である。小沢は開き直っており、この効果は持続しそうだ。しかし危険な側面がある。政界がある種の「学習」をしたことである。それは「政権批判」には「野党の疑惑」で対処するという手法だ。下手をすれば反対派を陥れる現代版「恐怖政治」の発想へとつながりかねない側面を持つ。
民主党代表・小沢一郎の秘書逮捕以来、世論形成に大きな効力を持つ民間テレビの批判が小沢に向かい、麻生から離れた。みのもんたも、口癖が「小沢続投」批判となり、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いといった調子での麻生批判をぷっつりやめた。つられてテレビで動く軽佻(けいちょう)浮薄型政治家たちも、「麻生降ろし」をやめた。 おかげで麻生は好きなホテルのバー通いを復活させ、自重していた失言癖がちらちら出始めている。一時は激やせ説がでて、千賀子夫人が眠れないことを心配していたが、それもなくなったのだろう。公邸でなく、自宅泊まりも、多くなった。国民にしてみれば、首相がバーに通おうが、私邸に泊まろうが、本分を果たす限り何ら問題はない。その本分も「北ミサイル迎撃指示」で、国民の一定の信頼を取り戻す結果となった。
まさに「民主殺すにゃ刃物はいらぬ、小沢続投あればよい」である。ここで重要なのは、政権を握った側は、捜査当局を動かすことができるということである。直接指揮しなくとも、首相の顔色を見て捜査が進行するケースもある。また個々の政治家をめぐる裏情報、スキャンダル情報も入る。小泉政権では政府・与党にスキャンダルが発生し、民主党が国会で取り上げると、それに倍増する民主党のスキャンダルがスポーツ紙や週刊誌に流された。政権側は“操作”できるのである。自民党は小沢の秘書逮捕での検察の公平性を、「首相経験者の田中角栄を逮捕したくらい公平」と強調したが、これは正解でもあるが、間違ってもいる。首相が三木武夫だから逮捕できた側面がある。つまり現在の与野党対決と同じ構図が、自民党内に「三角対決」の形で存在していたから、田中逮捕があったのだ。ロッキード・スキャンダルは世界中で問題になったが、刑事事件に発展させたのは、日本だけである。古くは吉田茂の佐藤栄作を救うための指揮権発動もある。
こうした素地の中で、政界が攻守ところを変えたことを銘記しておく必要がある。政界が与野党を問わず、批判ムード逆転の手法を“学習”したことは、今後の政治に影響を与えざるを得ないだろう。民主党が政権を取っても、同じパターンがあり得るだろう。危険な側面を持っているのだ。しかし、小沢は専ら検察陰謀説で事態を切り抜けようとしているが、これを支持するつもりも毛頭ない。小沢にはゼネコンとの関係で、誰が見てもすきがありすぎた。すべては、身から出たさびをつかれた本人が悪いのだ。要するに、政権にすきを見せれば、こうなるのだ。
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