国際政経懇話会
第258回国際政経懇話会
「最近の国際金融情勢」(メモ)
第258回国際政経懇話会は、古澤満宏・財務省財務官を講師に迎え、「最近の国際金融情勢」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2013年9月26日(木)正午より13時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「最近の国際金融情勢」
4.講 師:古澤満宏 財務省財務官
5.出席者:26名
6.講師講話概要
古澤満宏財務省財務官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
世界経済の課題
(イ)世界経済は、EUが2013年に▲0.1%、04年に+1.2%成長の見通し、また新興国は5%台、中国は7%台で推移(2013~14年)の見通しである。米国の失業率は右下がりで2014年には7.5%に下がる見通しである。一方、新興国・途上国の一般政府債務残高は33%台に下がる見込み。
(ロ)こうした中、9月初旬のG20サンクトベテルブルグ・サミットは、米国の民需の強まり・日英の成長・ユーロ圏の回復徴候、新興国市場の一部での減速を指摘、すべての先進国による信頼に足る意欲的な各国個別の中期的財政戦略策定、金融政策の将来的変更については慎重な調整と明確な説明、競争力のために為替レートを目標としないこと等を宣言した。
(ハ)G20はリーマンショック以降、従来の蔵相・中銀総裁会議に加え、首脳会議も開かれるようになった。G20がG7にかわって国際金融・経済についての議論を行う中心的なフォーラムになったのはG7経済が世界のGDPの47.3%のみ、G20が77.4%を占めるに至ったことが背景にある。
(ニ)米国(金融危機からの脱却・QE3の出口、債務上限問題)、欧州(低成長・高失業率等)、日本(アベノミクスによるデフレからの脱却)、中国(投資主導から消費主導、所得格差是正)、新興国(通貨下落・インフレ・資本流出)等の課題を抱える世界経済の中で、米国が9月に量的緩和の出口を考えているとみられていたがそうならなかったのは、まだまだ慎重に判断することが必要だの理由によろう。
新興国経済
通貨が下落している新興国だが、経常収支の対GDP比率が中・韓・露はプラスであるのに対し、インドは通貨下落率▲11.6%、経常収支対GDP比▲5.1%。ブラジル、インドネシア、トルコ等も右双方の指標がマイナスであり、様相を異にしている。ただし、右4か国の外貨準備高は大きいことを忘れてはならず(金を除く外貨準備高はインド2,589億ドル、インドネシア893億ドル、ブラジル3,688億ドル、トルコ1,044億ドル)、さらにインドについては2013年9日6日に日印通貨スワップが500億ドルに拡充合意されルピーが反転した。
中国経済
(イ)中国・韓国と我が国は難しい状況にあるが、事務レベルでは絶えずコミュニケーションが取れている。
(ロ)これまで輸出や投資主導で発展してきた中国経済は、内需(特に消費)主導型への転換が重要。現統計では民間需要35.7%、政府消費13.5%、総固定資本形成46.1%、在庫増加2.0%、純輸出2.7%となっている中国のGDP構成だが、実は消費が把握されておらずすでに5~6割あるのではないかとの見方もある。
(ハ)中国の、富裕層(上位20%)/貧困層(下位20%)の比率は9.6倍(日本6.2倍、米国7.9倍)。また、上下各5%の比較だと格差は二百数十倍という数字もある。ジニ係数は0.47と中南米並みに高い。(日本0.33、米国0.38)。
(ニ)高齢化に関しては2012年に労働生産年齢人口がピークアウトした(ピーク9.4億人)。2031年には人口も減少に転じるとの推計あり(ピーク14.5億人)。高齢化と経済成長、社会保障と財政負担増等の懸念材料あり。
(ホ)シャドーバンキングについては、リーマンショック等と異なりグローバルな危機にはなりにくい。
国際金融等から見た日本経済
円安誘導云々と述べる人がいるが、我が国の政策はデフレからの脱却のためであり、為替を目的としていない。日本の対中貿易輸入も赤字も増えており(2013年7月には輸入14.9兆円)、まったく批判は事実に反する。我が国の貿易収支は14か月連続で赤字であり、
経常収支もドイツの経常黒字の対GDP比は7.0%、韓国は3.7%、中国は2.6%に対し、日本は1.0%である。
日本の財政再建ほか
(イ)トロント・コミットメントの2015年までに財政赤字を半減し、2020年までにプライマリーバランス達成するとの目標は、8月8日の中期財政計画でも維持。2020年のプライマリーバランス達成にはまだ努力を要する。
(ロ)国際金融仲間の中でアベノミクスは肯定的に注目されている。そうした中で、IMFは消費税引上げの予定通りの実施、野心的かつ具体的な財政健全化計画、医療費抑制等の必要性を指摘、また金融政策については信頼に足る財政計画・成長戦略も合わせ実施されれば2%の物価上昇目標は達成可能としている。
(文責、在事務局)