国際政経懇話会
第252回国際政経懇話会
「2013年の日本外交の展望」(メモ)
第252回国際政経懇話会は、河相周夫外務事務次官を講師に迎え、「2013年の日本外交の展望」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2013年2月13日(水)正午より午後1時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「2013年の日本外交の展望」
4.講 師:河相 周夫 外務事務次官
5.出席者:34名
6.講師講話概要
河相周夫外務事務次官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
外交・安保政策の基軸としての日米関係
2月12日の北朝鮮による3度目の核実験を受け、日本は現在、昨年12月のミサイル発射に対する「制裁決議」よりも、さらに厳しい国連決議を求める予定であるが、北朝鮮を巡る事態はきわめて深刻であり、いわば隔靴掻痒の状況である。中国は以前より、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して反発してきたが、同時に北朝鮮を過度に追い込むことには消極的であり、今回の対応についても頭を悩ましているのではないか。他方、ロシアもまた、北朝鮮に対しては手を焼いている印象である。こうした状況下での日本外交の舵取りはきわめて難しいが、安倍新政権はその外交・安全保障政策の基軸を「日米関係」に置き、まずは日米同盟の強化を重視している。特に、集団的自衛権や沖縄の米軍基地問題については、今後日本がより能動的に取り組むべき重要課題であると考えている。またTPPについては、結論的なことは言えないが、日米関係を安全保障面で支えるのが日米同盟だとすれば、これを経済面で支える裏付けがTPPであるとも言えよう。TPPへの参加は、米国に「巻き込まれる」という見方ではなく、米国を「アジア太平洋地域に引き込む」という捉え方から検討すべきではなかろうか。
日本外交におけるアジア太平洋地域の位置付け
日本外交が留意すべきグローバルな課題には、テロや核・ミサイル問題等があることは確かだが、最優先課題としてアジア太平洋地域におけるプレゼンスの強化がある。同地域は、世界の成長センターであり、そこでの日本の影響力強化は、単にアジア太平洋地域だけでなく、グローバルにも大きな意味をもつ。また、日本経済の活性化は、日本外交の一つの大きな基盤であり、日本がアジア太平洋地域全体の経済成長を牽引しつつ、その成長を日本経済にも取り込むという戦略が必要である。一方、この地域での日本外交の成否は、米国の「アジア回帰=リバランシング」政策にも大きく左右されるが、現在の中東・アフリカ情勢を踏まえると、米国がその軸足を直ちにアジアに移すことは容易ではない。ゆえに、日本としては、米国の関与を如何に引き出すか、その工夫が求められている。
能動的な近隣諸国外交の展開
安倍新政権の誕生以来、日本は米国との関係を基軸としつつ、ASEAN、豪州、インド、韓国などの近隣諸国との外交関係においても、すでに幾つかの前向きの成果を挙げている。例えば、今年1月中に、安倍総理、麻生副総理、岸田外相は、ASEAN10か国のうち7カ国を訪問したが、二国間ベースでの関係の重要性を互いに再認識出来た意義は大きい。日中関係は、重要な二国間関係であることは基本的に変わらないが、中国が今後、国際舞台で建設的役割を果たしつつ、正しい方向に向かうか否かが、アジア太平洋地域の安定に大きな影響を与えると認識している。尖閣諸島での問題については、今年に入り、中国も日中関係を再び「戦略的互恵関係」と呼ぶなど、その姿勢には部分的な変化が見受けられる。日韓関係もまた重要であるが、「竹島」や「慰安婦」といった難しい問題がある。日韓両国にて、新しい政権が誕生する機会を捉え、両国間における共通利益に注目しながら、関係改善の可能性を探りたい。ロシアは、日本にとっての「アジア太平洋のパートナー」であるが、今後は「北方領土問題」とともに、経済関係や安全保障関係なども含め、日ロ関係全体を見据えながら、対ロ関係に臨みたい。
(文責、在事務局)