国際政経懇話会
第223回国際政経懇話会
「民主党の政治をどう見るか」(メモ)
第223回国際政経懇話会は、遠藤浩一拓殖大学大学院教授を講師に迎え、「民主党の政治をどう見るか」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2010年4月14日(火)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「民主党の政治をどう見るか」
4.講 師:遠藤 浩一 拓殖大学大学院教授
5.出席者:20名
6.講師講話概要
遠藤浩一拓殖大学大学院教授の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
民主党政権誕生の背景について
2009年の衆議院選挙では、民主党が308議席を獲得し、119議席を獲得するに止まった自民党を圧倒するかたちで政権交代が生じた。その背景には、無党派層が再び自民党から離れたことと、自民党支持層自体が自民党離れを起こしたことがある。その意味で、この政権交代の本質は、民主党が勝利したというよりも、自民党が敗北したことにあるといえる。この選挙では、民主党が無党派層からかなりの票を得たことが明らかとなったが、この現象の裏には新たな「政党選択層」の出現があるとみることができる。新たな「政党選択層」は「無党派層」の一種と言えるが、二大政党制の進展を受けて、政党に距離を置いたりこれを傍観したりするだけでなく、選挙ごとに政党を選択する姿勢を持つことが特徴である。さらに、ここ数回の国政選挙において、無党派層のみならず、自民党支持者までが大胆な投票行動を示すようになったのは、有権者全般が、自らの既得権益を維持するという「保身」の立場から、自民党に対し懲罰的態度という「批判」の側面を前面に出したことがある。
「2003年体制」仮説
自民党が衰退した要因としては、有権者が「小泉改革」による地方の疲弊と地方組織の衰退を感じるようになった他、他党との選挙協力がもたらした副作用、候補者擁立システムの不整備、党内の理念・政策の混乱が放置されたこと、旧田中・竹下派主導の党内派閥の弱体化が挙げられるが、これらの衰退要因は、そのまま民主党の伸張要因となったといえる。すなわち民主党は、疲弊した地方組織を分断して取り組み、自民党から離れた層を吸収し、本来自民党から出たはずの新人候補者や自民党離党者を大量に擁立し、自民党の理念・政策の混乱で自党内の政策・理念の対立を相対化し、さらに党内で、小沢、鳩山氏をはじめとする旧田中・竹下派出身者による指導体制を敷いている。この動きの背景には、2003年の総選挙で民主党が躍進し、自民党と民主党を中軸とする2大政治勢力が成立したあたりを境に、長らく自民党優位体制を構成してきた要因が、そのまま民主党に移動したという「2003年体制」とでもいうべき体制転換があったのではないか。
民主党政治の現状と参院選後の政界再編の展望
民主党政権の問題点としては、閣僚の言動や政府方針がたえず動揺していること、「党務」を「公務」に優先させる国会軽視にみられる歪な民主主義観、「政治とカネ」をめぐる公私の感覚の欠如、旧社会党から自由原理主義派までを党内に包含するといった矛盾、経済政策における成長戦略不在のままの極端な再分配重視路線、政権交代を党の大目的としたことで、政権獲得後の目的が不明であることなどが挙げられるが、なかでも党内合意形成の全体主義化が顕著であることが問題である。そのような民主党政治の現状にあって、今年の参院選では、民主党は昨年吸収した保守票をはたして維持できるか、また自民党が得票・議席を回復できるか、といった点が注目される。他方、自民・民主の両方を嫌う有権者の受け皿として、新党結成の動きも活発化している。新聞調査によれば、平沼・与謝野氏の立ち上げた新党には「期待する」が18%で「期待しない」が76%となっているが、期待値が20%近くもあることに注目すべきである。これら新党の課題は、候補者のリクルートと自民党を含めた他の諸政党との連携であろう。また、今後の政界再編の動きは、短期的には、平成22年参院選まで「反民主」票の吸収と議席化を目指し、中期的には次期総選挙まで政権構造の再編成を行い、長期的には、次期総選挙後の理念・政策による政党再編というように、短期・中期・長期の三段階に分けて進められるべきである。
(文責、在事務局)