国際政経懇話会
第222回国際政経懇話会
「最近の国際金融情勢」(メモ)
第222回国際政経懇話会は、玉木林太郎財務省財務官を講師に迎え、「最近の国際金融情勢」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2010年3月16日(火)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「最近の国際金融情勢」
4.講 師:玉木 林太郎 財務省財務官
5.出席者:23名
6.講師講話概要
玉木林太郎財務省財務官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
G20プロセスの台頭と評価
G20は、アジア通貨危機の後に新興国との対話の場として1999年に設立されたフォーラムであるが、その機能は限定的であり、取り扱う議題も限定されていた。しかし、世界金融危機を契機に2008年に米国が招集したワシントンDCでのG20サミット以降は世界の経済危機対応ないしは経済調整に関する世界随一の首脳レベル会合としての地位が確立したかに見える。近年、G7の時代は終わりG20の時代に入ったとの評価もまま聞かれるが、G7にはG20にはない参加国の同質性や長年蓄積された人的絆の強み等があり、また機動性を要する世界のさまざまな危機対応や途上国の開発問題等、雑多な参加国を擁するG20では扱えない議題を抱えており、その意味で、G7はG20の背後に隠れるものではなく、今後もその有用性は残るだろう。今後は、試行錯誤を経つつも、両者の住み分けが進むと考えられる。
金融危機後のIMFの役割の拡大
2008年の金融危機以降、IMFは、その資金規模を危機以前に比べ3倍に拡大させたが、この背景には日本のIMF支援が他国のIMF支援を牽引したという日本の大きな貢献がある。また、融資条件が大幅に改善されたこと、危機への事後的対応機能のみならず、危機を未然に防ぐための予防機能が備わったことで、IMFの役割は顕著に拡大している。このようなIMFの役割の拡大にともない、IMFは従来の「国際収支問題を扱う機関」から「金融不安へ対応する機関」へと脱皮しつつあるといえる。
転機を迎える地域メカニズム
今回の金融危機の特徴として、①危機が個別の地域内で伝播するだけでなく、一気にグローバルに波及すること、②危機対応に要する資金額がアジア通貨危機当時に比べ遙かに大規模となったこと、③「危機対応」だけでは収拾がつかず、「危機予防」の重要性が高まったこと、が挙げられる。したがって、地域メカニズムに閉じこもり、各国が自国を守る政策の有効性には限界があるといえる。その意味で、たとえば、チェンマイ・イニシアティブに代表される金融面での地域統合プロセスは、転機を迎えているのではないか。むしろラトヴィアの経済危機対応にみられたように、EUが支援プログラムを作成し、IMFがそれを承認するというかたちで、リージョナルなメカニズムとグローバルなメカニズムをうまく結合させるということが重要だ。この点は、危機予防の視点を含め、IMFとアジア諸国の関係改善のための手がかりになるのではないか。
ユーロからみる共通通貨システムの問題点
今回の危機により、共通通貨システムが持つ問題点も明らかとなった。欧州のケースについていえば、共通通貨ユーロの導入は、域内経済において、国際収支の制約およびインフレの懸念なしに、その経済規模を拡大することが可能となったが、その反面、金利及び為替の調整が不可能となったことで、マクロ経済とくに対外面での調整が財政のみに依存するメカニズムにあることが明らかとなった。2001年にユーロに加盟したギリシャでは、当初見込まれていた投資の増加は見られず、逆に財政規律が緩み、競争率が低下する現象が起きた。このギリシャ問題から、ユーロの仕組みは、加盟国間が単に財政赤字をGDPの3%以内に抑えるだけでなく、各国間の競争力格差を調整すべく各国内で、経済政策にディシプリンを持ち込まないと維持することができないという点が浮き彫りとなった。
金融規制強化への動きに対する世論の関心の高まり
欧州のタブロイド紙には高級紙には見られない一般世論の本音が垣間見られる。そのなかで、一般世論が昨年12月来、金融界の動きに対して大きな反発を示していることが見て取れる。各国の指導者は、金融危機の中で、金融界に対して様々な対処をとってきたが、世論のコントロールを出来ていないのが現状だ。人びとの金融規制問題への関心は無視できない段階に達しており、これはG7としても無視できない動きである。
(文責、在事務局)