国際政経懇話会
第218回国際政経懇話会
「サイバーインテリジェンスと安全保障」(メモ)
第218回国際政経懇話会は、宮脇磊介初代内閣広報官を講師に迎え、「サイバーインテリジェンスと安全保障」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2009年10月15日(木)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「サイバーインテリジェンスと安全保障」
4.講 師:宮脇 磊介 初代内閣広報官
5.出席者:13名
6.講師講話概要
宮脇磊介初代内閣広報官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
「サイバーインテリジェンス」と「見えない兵器」の時代
近年、情報通信手段や各種インフラの電子化が世界的に急速に進展している。そのなか、海外各国は、外国の政府機関や企業の電子ネットワークに侵入し、秘密情報や技術情報を収奪したり、電子システムの撹乱や破壊を目的とする「サイバーインテリジェンス」と呼ぶべき情報活動を活発化している。その主要な手法である「サイバー攻撃」は、「傍受兵器」などと並んで、今や「見えない兵器」による国益実現の時代の主要な役割を担っている。国家安全保障上、ゆゆしき「新しい脅威」である。
「サイバーならず者国家」としての中国・北朝鮮
現在「サイバー攻撃」をもっとも露骨に展開しているのが中国と北朝鮮である。両国とも政府レベルでハッカー養成機関やサイバー攻撃部隊を編成し、実際に、我が国や米国等の政府機関や企業の電子ネットワークへの侵入を通じて、情報窃取や各種破壊活動を日常的に展開している。超高度な技術水準を保持し、各国にサイバー攻撃をしかける両国はまさに「サイバーならず者国家」の名にふさわしいといえる。
「エシュロン」を通じた米国の経済情報戦略
「エシュロン」は、冷戦期に米国が中心となって開発し、世界中に張り巡らされた通信傍受システムであるが、冷戦終結後、ソ連というターゲットを失った米国の情報コミュニティーが、死活を賭けて「エシュロン」を活用した経済情報戦略を展開するようになった。これは、海外企業の外国公務員に対する贈賄等の不正行為を「エシュロン」によってキャッチして契約を阻み、米国企業による外国政府への売り込みを成功させるというものである。最近の検察当局による建設会社の海外事業摘発には、米国からの督促が背景にあるとみてよい。
「サイバーインテリジェンス」時代の安全保障と日本
「サイバーインテリジェンス」は今や世界各国の国家目的を実現する重要なツールとして、その技術開発や実戦訓練が日常化しており、国家戦略や国際関係のありようは、そのような現状を踏まえて組み立て直さねばならない段階にきている。残念ながら、我が国の「サイバーインテリジェンス」の現状は「手がつけられない無能(incompetent)」と称される水準にあり、指導者層の「サイバー・リテラシー」は決定的に欠如している。「文系」の技術への無知と技術専門家の「パシフィズム」がこうした現状の一因だが、こうした垣根を取り払い「サイバーインテリジェンス」を強化することが我が国の安全保障にとっての急務である。
(文責、在事務局)