国際政経懇話会
第216回国際政経懇話会
「日本政治の現状と総選挙後の展望」(メモ)
第216回国際政経懇話会は、杉浦正章政治評論家を講師に迎え、「日本政治の現状と総選挙後の展望」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2009年7月10日(金)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日本政治の現状と総選挙後の展望」
4.講 師:杉浦 正章 政治評論家
5.出席者:24名
6.講師講話概要
杉浦正章政治評論家の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
7月12日の都議会議員選挙とその後の総選挙は、両者ともに民主党の圧勝が予想される。浮動票が民主党へ流れるこのような投票行動をどう見るのか。これは、民主党を積極的に選択しているのではなく、一度政権を交代させ民主党を試してみようという消極的な投票行動と考えられる。政権をマニフェストではなく、ムードから選ぶのである。確かに自民党政権には、国民が失望する側面がある。長期政権を担ってきた自民党は、騙し騙し使ってきた古い屋台のようなもので、その土台は腐ってきている。ここ3代の首相は、総裁候補の残滓としか言えず、また国会議員は2世、3世議員が増え政治家の素養を持つ人材が減っている。その意味で来る総選挙は、現政権に対する「懲罰的」選挙と言える。最新の世論調査から予測すると、直近で自民党が連勝している小選挙区でも民主党が勝利する可能性があり、そうなると金城湯池も民主党に食われることとなり大きな地殻変動が起きるかもしれない。自民党が、鳩山の個人献金偽装問題をいくら攻撃したとしても、民主党単独政権成立の可能性が濃厚と言える。
民主党が政権を取った場合の次期閣僚名簿を見ると、旧社会党系が目立ち、日教組出身も含まれている。この閣僚名簿から成る民主党政権には、3つの問題が考えられる。第1が財源、第2が外交・安全保障、第3が官僚との関係である。第1の財源については、自民党を上回る「ばらまき」が懸念される。高速道路の無料化、こども手当、高等教育の無償化、農政改革などで、これらの財源として「節約」により20兆円確保すると言う。これは天下りを減らし、社会保障費を抑制したとしても容易に捻出されるものではなく、現実的に財源を確保できるとは考えにくい。第2の外交・安全保障問題について最も懸念されるのは、「日米外交・安保摩擦」である。民主党のマニフェストでは、イラクからの即時撤退、普天間基地の合意撤回を始めとする政策見直しが柱とされている。アメリカの元国防次官補のジョセフ・ナイ氏は、昨年民主党幹部との会談で、普天間の見直しは、「反米と受け止める」と述べており、今後外交・安保分野における日米関係の行方が懸念される。第3が官僚との関係である。民主党は政権を取れば、霞ヶ関を押さえ込むという対決姿勢を強く見せている。その構想として、民主党の国会議員100人近くを各省庁に送り込み、各省の副大臣と政務官に加え大臣補佐官を新設するとしている。さらに幹事長、政調会長らに閣僚を兼務させることも検討している。しかしこのように党を前面に押し出す方法では、各省庁からの反発は必須であり、実際の政治は機能しないであろう。また三権分立との兼ね合いも問題となる。
このところマスコミは、頻繁に政局を読み間違えている。「都議選前の解散」で間違え、「幹事長に舛添要一」で間違え、「東国原入閣」で間違えるなど立て続けに間違えている。そしてその責任の全てを麻生のせいにしている。その原因は、情報源が良くないにもかかわらず、複数のソースから確認をとろうとせずにすぐに飛びつき、報道してしまうという姿勢にある。麻生の発言がぶれると言われるのには、マスコミの情報入手の際の甘さも一因にあると考えられる。
(文責、在事務局)