国際政経懇話会
第214回国際政経懇話会
「日本の防衛と安全保障政策」(メモ)
第214回国際政経懇話会は、増田好平防衛事務次官を講師に迎え、「日本の防衛と安全保障政策」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2009年5月26日(火)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日本の防衛と安全保障政策」
4.講 師:増田 好平 防衛事務次官
5.出席者:24名
6.講師講話概要
増田好平防衛事務次官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
北朝鮮に対する政策を考える場合、ミサイルと核実験について考える必要がある。北朝鮮の行動を追うと、10年前にまずテポドンが発射され、日本を飛び越え大きな騒ぎになった。それから99年3月に能登半島沖不審船事案が起き、我々自衛隊にとって初めての海上警備行動の発令を受け追跡した。2006年の7月に、北朝鮮が7発の弾道ミサイルを発射し、同年10月には核実験を発表し、それぞれ国連決議が採択された。今年に入ると、北朝鮮が危険空域を設定したうえで、4月5日にミサイルを発射し、これを批判した国連安保理議長声明が発出されると右声明を非難した外務省声明を発表した。先般(2009年5月25日)の地下核実験の後も、北朝鮮は今回の安保理議長声明に対して非難を行った。また韓国の発表などによれば、短距離のミサイルも発射したとのことである。少なくとも、国としてやると発表したことが実行されている。彼らが言う大陸間弾道ミサイル等の発射が短距離のものなのか、あるいは本格的なものなのか、今後我々が注目すべき点である。
昨日の北朝鮮の核実験後、自衛隊の役割として、チリ・放射能を集める作業を「T-4」(練習機)を使って行っている。先月のミサイル発射に関して、防衛省に要請されたのは、1秒でも早く国民に伝えることであった。当初防衛省が発したミサイル実験実施の報は、誤報として各方面から批判を受けた。実は、誤報には発出後1分以内に気づいたが、すでにメディア等で発表され、各方面の組織が動き出していた。防衛省としては、ミサイル発射が、日本の上空を越えてから伝えられるようなことはさけたいと考えてきた。最初はともかく、その後実際にミサイルが日本を越える前に、国民の皆様に伝えることはできた。日本の弾道ミサイル対処能力に関して、「SM-3」の機能を搭載したイージス艦が2隻あり、これらを日本海側に展開した。太平洋側には、ミサイル迎撃能力の無いイージス艦「きりしま」を配備し、情報収集を行った。ちなみに、イージス艦の防護範囲は広く、2隻あれば日本全土をカバーすることができる。イージス艦の防護範囲は広いが、我々は「上層下層の防衛」を掲げ、2層に分けて防護しようとしている。下層での迎撃は、パトリオットの役割である。
「情報」に関して、日本は過去に漏洩事件もあり、情報管理に関しては厳しい。現在、政府では「防衛計画の大綱」の作り直し作業に入っている。平成16年に現在の「防衛計画の大綱」が策定されたが、新たな情勢に対応した手直しが必要である。また、政府内では次の中期防衛計画に向けた議論がなされているが、最大の焦点の1つは、「陸上自衛隊のあり方」であろう。防衛省と内閣官房の関係であるが、以前は、防衛省が原案を考え内閣官房に提出していたが、現在はその関係が入れ替わることもあり、どちらかというと内閣官房がイニシャティブを取る状況が続いている。安全保障政策の議論は政府全体で議論する問題であるが、防衛省としては、自衛隊が防衛政策に沿って国民の負託にこたえられるよう、常時運用・訓練に努めることが重要である。
7.
その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われ、話題は、防衛庁から防衛省への昇格の意義、北朝鮮問題、普天間基地の移転問題、オバマ政権の核軍縮構想と拡大核抑止(いわゆる核の傘)との関係、防衛省の組織改革と三自衛隊の関係、三自衛隊相互のあるべき関係、防衛力整備問題などが取り上げられた。なお、短時間であるが出席した小池百合子衆議院議員からは、目下自民党国防関係者の間で行われている防衛論議の紹介、日本版NSCの必要性についてのコメントがあった。
(文責、在事務局)