当フォーラムは、日本にとって戦略的に重要な地域についての最新かつ正確な情報を収集分析し、その成果を発信する機会として「政策パネル」シリーズを展開していますが、このたび、私たちが住む日本という国、とりわけその中心的都市の一つである「東京」をキーワードとして、魅力ある日本固有の歴史や文化をはじめ、和食とそれを引き立たせる名脇役の和食器、そして、アニメや漫画などのサブカルチャー、さらには四季の移ろいなどに関する動向や情報を収集分析し、継続的に内外に情報発信するべく、「東京パネル」を始動することとなりました。
日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、訪日外国人客数はコロナ禍から順調な回復を見せ、2024年の訪日外国人数は前年を大きく上回る3,310万人(2023年比131.3%)と推計され、コロナ禍から回復した観光業界を中心にインバウンド需要が順調に回復しつつあります。また、そもそも日本の伝統文化や伝統芸能、あるいは日本のアニメなどは、時代を問わず海外で高い評価を受けており、「日本再ブーム」ともいうべき動きが顕著に見られます。
他方、訪日外国人旅行客の急増は、異文化への理解をはじめ、人材不足やインフラへの負荷、さらには、オーバーツーリズムの問題といった様々な課題が浮き彫りとなりました。そして、何より我々が忘れてならないのが、日本という国が「観光立国」であると同時に「災害大国」でもあるという二面性を持っている点にあります。2024年1月1日に発生した能登半島地震は、能登半島を中心に北陸地方に甚大な被害をもたらしたことは、皆様ご記憶のとおりです。2011年の東日本大震災以来の衝撃と悲しみは、われわれ日本人の心に深く刻まれました。また、改めて言うまでもなく、2023年は、関東大震災から100年の節目の年であったほか、2024年は阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えました。日本の歴史に刻まれた災害はほかにも数え切れないほどあります。
第2次大戦後、日本は国際社会からの支援・融資を受けながら、自助努力の精神に基づき、戦禍で疲弊した国土を復興させ、常に国際社会と共に歩み他国と共に栄えることを重視してきました。日本人は、古来より、自分のことを多少後回しにしてでも他者を尊重する、思いやりや礼儀を大切にしてきたことから、その精神性を「日本人の強く美しい心」と称され、その精神は今日まで脈々と受け継がれてきました。こうした精神は、日本遺産についても同様であり、日本においては、有形、無形に関わらず、どちらも長い時間をかけて人から人へと受け継がれてきました。さらには、文化財に関していえば、東京タワーや広島平和記念資料館などは戦後復興のシンボルとして、今日においても、その重要な役割を担い続けています。
このように日本という国は、多面的な魅力を有しており、今改めて、日本の力を相対的かつ多角的に分析し、日本の強みや魅力といった特性を明らかにする必要があるといえます。
以上の問題意識を踏まえ、本パネルでは、その活動を通じて、日本固有の歴史や文化等の魅力を日本人がまずもって再確認するとともに、その多面的な魅力に加えて、潜在的な価値等についても発掘し、もって内外へ積極的に発信していこうとするものであります。