外交円卓懇談会
第66回外交円卓懇談会
「日露関係の現在と未来」(メモ)
グローバル・フォーラム
公益財団法人日本国際フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局
日本国際フォーラム等3団体の共催する第66回外交円卓懇談会は、ミハイル・ミハイロヴィチ・ベールィ駐日ロシア連邦大使を報告者に迎え、「日露関係の現在と未来」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2011年2月8日(火)午後3時00分より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日露関係の現在と未来」
4.報告者:ミハイル・ミハイロヴィチ・ベールィ 駐日ロシア連邦大使
5.出席者:32名
6.報告者講話概要
ミハイル・ミハイロヴィチ・ベールィ駐日ロシア連邦大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
日ロ関係の現状
ロシアにとって日本は重要な隣国であり、政治・経済・安全保障などの様々な領域における重要なパートナーである。両国間の関係強化は、両国それぞれの国益に資するのみならず、北東アジア全体の平和と安定の礎石となりうる。ロシア側としても、これまで様々な機会を捉え、多様な分野における両国間の「対話」を促進してきた。その一環として、例えば、昨年横浜で開催されたAPECにおいてドミートリー・メドヴェージェフ・ロシア大統領と菅直人首相の会談を実現できたことは、両国関係強化の大きな一歩であったといえる。また、前原誠司外相が来る2月10~13日の日程でロシアを訪問する予定であるが、このような閣僚級以上の人間によるハイレベルな会談に加えて、議員やそれより下のレベルにおける日常的な交流も重要である。今日の国際社会には、テロ、WMD、朝鮮半島問題、アフガニスタン問題などといった懸案が目白押しであるが、これらの問題について、日ロ間でも共同して取り組む姿勢を強化していくことが重要だ。
経済協力関係について
2008年の世界金融危機以後、日ロ間の貿易総額は大きな落ち込みを見せていたが、昨年は、日ロ共同で行ったサハリン大陸棚石油・ガス開発や、東シベリア・太平洋パイプライン建設プロジェクトなどを梃として、両国間の経済的連携が再び強化され、その結果、同年の日ロ貿易総額は2兆1000億円(240億ドル超)を越え、前年の1兆1000億円(120億ドル超)と比べてほぼ倍増となった。そもそもロシアは、日本に対する主要な資源輸出国の一つであり、これは日本の主要な資源輸入元である中東情勢が安定しない現下の状況に照らしても、非常に重要な意味を持つ事実であるといえる。また、小松製作所など日本の企業が、近年、ロシア市場を魅力ある投資先として捉えている点も、両国の経済関係強化にとって望ましい兆候だ。さらにロシア政府は、近年、ロシア経済の近代化(モダニゼーション)に大きな関心を抱いており、この分野における日本の貢献は非常に大きなものになりうると期待している。加えて、2012年にはウラジオストックにおいてAPEC首脳会談を開催することとなっているが、これを機に両国の経済関係がさらに強化されることを期待したい。
日ロ平和条約について
他方、日本とロシアの間には未だに平和条約が締結されていない。この問題は、むろん政治的な側面を持つと同時に、歴史的・感情的な側面も絡む複雑な問題であり、この問題の影響が様々な分野に大きな影を落としている。そして、解決までには非常に大きな困難も予想される。昨年には北方領土問題が改めて表面化したが、この問題の解決は決して簡単なことではなく、日ロ間の平和条約を両国が納得するかたちで締結するためには、第一に両国間の信頼醸成を進めていくことが必要である。そのためには両国それぞれの国内において相手国に対する友好的な雰囲気が醸成される必要がある。現時点では残念ながら、そうした国内的雰囲気はほぼ存在しないといえる。まずはそのようなポジティブな雰囲気を両国国内に作りだすことが先決である。その上で初めて平和条約締結が可能な環境が生じるといえる。他方、世界経済は近年その複雑性と相互依存性をますます強めつつあり、もはやいかなる経済的問題といえども、ある一国のみで対処することはできない。その意味で、日ロ間の関係においても、政治的困難は認めつつも、まずは経済協力を進めるという方法も模索すべきだろう。ロシアは日本にとって潜在的に重要かつ有益で、信頼できるパートナーであり、両国政府は関係改善に向けて今後も努力していくべきだ。
(文責、在事務局)