外交円卓懇談会
第49回外交円卓懇談会
「変化する国際関係とアジアの台頭」(メモ)
第49回外交円卓懇談会は、ディビッド・ウォレン駐日英国大使を報告者に迎え、「変化する国際関係とアジアの台頭」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2009年5月22日(金)午後3時より午後4時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「変化する国際関係とアジアの台頭」
4.報告者:ディビッド・ウォレン 駐日英国大使
5.出席者:25名
6.報告者講話概要
ディビッド・ウォレン駐日英国大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
英国の長期的な外交政策にとって、中国関係ほど重要な問題は数少ない。今や中国は英国の利害に重大な影響を及ぼしている。中国の国内政策および対外政策は、英国やその同盟国、日本などのパートナー諸国が取り組むグローバルな課題にとって極めて重要な要素となっている。英国政府は対中政策についての戦略を発表したが、それには3つの目標がある。第1に、中国の成長から英国にとって最高の結果を得ることである。具体的には、二国間貿易や投資の拡大、科学協力など教育分野における協力、人的交流の促進が挙げられる。第2に、中国が責任あるグローバル・プレイヤーとして台頭するよう促すことである。これは中国がより近代的な社会になることとも密接に関連しているが、中国をはじめとする台頭する国々が幅広い分野で多国間ルールにもとづく制度に参加する方法を見出すよう努力したい。具体的には、中国の国防予算および政策の透明性向上を通じた東アジア地域の緊張緩和、核拡散防止、国連安保理での欧米との協力、気候変動、開発、自由貿易の世界的維持と促進といったグローバルな課題に中国がより積極的に取り組むことを期待している。第3に、中国の持続可能な発展、近代化および内部改革の促進である。中国が世界でより近代的かつ責任あるプレーヤーになる上で、人権のさらなる尊重、法の支配の実現が重要である。近代化の加速には、社会福祉、エネルギー効率、教育、医療、環境保護に関する国内プログラムも含まれる。さらに、市民的および政治的権利に関する各種国際規約の批准、より独立性の高い司法制度の実現、死刑適用の大幅削減などが望まれる。
こうした戦略を進める上で、英国は日本との緊密な協力を望んでいる。日中関係は英国にとっても重要であり、近年の日中首脳の緊密な交流を歓迎している。経済危機への対応や気候変動、環境問題など数多くの分野で緊密な協力が行われていることは望ましいことである。また、歴史問題に関する論調が、節度ある抑制されたものになっていることも望ましい。日中両国は、人的交流の強化だけでなく、日中国民の相互信頼というより大きなレベルを見据えた形で、両国首脳の密接なつながりを図る必要がある。日中間の信頼が高まれば、前述の目標を達成するための日英間の緊密な協力も可能になる。英国は北東アジア地域の安全保障に関心を持っており、朝鮮半島の非核化と日本人拉致問題の解決を望んでいるが、そのためには北朝鮮に対して大きな影響力を持つ中国が重要な役割を果たすことは明らかであり、日中関係は地域の安定の動力源となるべきだ。日本に対する米国のコミットメントには揺るぎないものがある。東アジア地域への英国の関与は、規模や実体において米国とは異なるが、中国と密接に関わるのに並行して、日本との成熟した広範なパートナーシップを継続していくことが、東アジアの今後の安定と繁栄にとって最良の策であると確信する。英国は日本の国連安保の常任理事国入りを支持している。日本と中国が対立するのではなく、協力していけば、東アジア地域、そして世界はより安全になるであろう。
(文責、在事務局)