外交円卓懇談会
第44回外交円卓懇談会
「アフガニスタンにおける『テロとの闘い』の現状」(メモ)
第44回外交円卓懇談会は、ハルン・アミン駐日アフガニスタン大使を報告者に迎え、「アフガニスタンにおける『テロとの闘い』の現状」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2009年1月28日(水)午後3時より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「アフガニスタンにおける『テロとの闘い』の現状」
4.報告者:ハルン・アミン 駐日アフガニスタン大使
5.出席者:16名
6.報告者講話概要
ハルン・アミン駐日アフガニスタン大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
2001年9月11日にアメリカ合衆国で発生した同時多発テロ事件は、人類史に新たな一頁を開き、テロリストに対峙した世界的な連帯と国際協力が広がっている。しかし、それから8年近くが経った今、失望も大きい。武力衝突は前年比30%増、死者8千人以上と、2008年は最悪な一年となった。2009年年初には、カブールにあるドイツ大使館近くで自爆テロが起こり、この一年は昨年よりさらに状況が悪化するのではないかと懸念されている。このような緊迫した状況は、(イ)支援物資供給の偏りや、国際社会によるタリバン勢力への監視ミス、復興に対する過剰期待等の「国際的過失」、(ロ)パキスタンとの駆け引き、ソ連のアフガニスタン侵攻以後のイスラム教教育の歪み等の「地域的過失」、(ハ)アフガニスタン政府の弱い統治能力、政治腐敗等の「国家的過失」という3つのレベルの過失が原因である。
復興には破壊そのものよりも長い期間を必要とするため、30年にもわたる戦争状態の後の性急な復興への期待は、苛立ちを募らせるだけである。そうした中で、日本を含む国際社会の支持により、医療、選挙制度、教育、インフラ整備、通信といった分野では多くの業績も残り、国民の多くは未来への期待を抱いている。アメリカのオバマ政権下で「テロとの闘い」の焦点をイラクからアフガニスタンに移すことが決定し、ボスニア停戦に貢献したホルブルック氏のアフガニスタン・パキスタン特別代表任命に期待している。物資供給の比重もイラクからアフガニスタンへと移り、非軍事的解決のための開発援助といった分野でも協力が拡大することを期待している。アフガニスタン復興の成功のためには、国際的な連帯、周辺地域の協力、開発援助、アフガン東部とパキスタン北部に対する共通認識、および政治的・軍事的解決が不可欠である。
日本は「テロとの闘い」に貢献するにふさわしい中立的立場にあり、アフガニスタンにとって近代化の良き模範でもある。我々は過去7年間の日本のアフガン支援に感謝している。同時に、日本は今以上の貢献をすることができると期待している。日本の国内政治は難しい情勢にあるが、日本は「テロとの闘い」のために一丸となって何ができるか議論し、アフガニスタンの進むべき正しき道を見極めてほしい。もしアフガニスタンが敗北すれば、テロリストはその活動領域を広げるであろう。しかし国際社会が団結すれば、テロの拡大を防ぐことができる。我々に必要なのは、忍耐強くあること、明確かつ長期的な目標をたてること、そして9・11テロのような脅威はしばらく続くであろうという認識を持つことである。大事なのはテロリストに脅威をはびこらせる機会を与えないことである。そうすれば、アフガニスタンの次の10年は確実に向上すると確信している。
(文責、在事務局)