国際対話
日・アジア太平洋対話
「21世紀の国際秩序とアジアの海」
冷戦終結以来十有余年、中国をはじめとする新興国の台頭は、国際関係にパワー・トランジション(力の移行)を生じさせ、時代は、米国による一極支配から多極支配を経て無極支配とも呼ばれる段階へと移行し、今なお新しいバランス・オブ・パワーの着地点に到達せず、楽観を許さない状況にあります。中でも、21世紀のパワー・トランジションの主要な舞台であるアジア太平洋地域は、目覚ましい経済成長を遂げる一方で、各国が自国の利益のみを追求するという動きもみられます。近年の中国の軍事的台頭はその典型ですが、こうした状況に対し、わが国を含むアジア太平洋諸国は、ASEAN地域フォーラム(ARF)による信頼醸成を「漸進的」に進めてはいるものの、未だ具体的な紛争解決のアプローチ、ひいては同地域にあるべき安全保障の秩序像を見出だせずにいます。アジア太平洋の中核を占めるわが国としては、日米同盟を基軸としつつ、豪州、ASEAN諸国、中国といった国々との二国間ないし多国間協力を推進し、以てアジア太平洋地域の秩序形成を主体的にリードしなければなりません。そのためにも、同地域に共通する諸問題、例えば、緊張高まる東シナ海、南シナ海情勢、海賊問題、テロリズム、海洋法の適切な執行等について率直に議論を行うことで、無極支配とも呼ばれる中に「共通の土台」を見出さなければなりません。
このような問題意識を踏まえ、2016年7月12日(火)東京は明治大学グローバルフロントにおいて、グローバル・フォーラムは、明治大学国際政策研究所、西シドニー大学および公益財団法人日本国際フォーラムとの共催により、『日・アジア太平洋対話「21世紀の国際秩序とアジアの海」』を開催いたしました。
本「対話」は、セッションⅠでは「グローバルな視座からみたアジアの領土海洋問題」、セッションⅡでは「開かれた自由で平和なアジアの海を維持するために」について、米国、豪州、中国、台湾等、アジア太平洋地域よりの専門家を東京に招き、伊藤剛グローバル・フォーラム有識者世話人(明治大学教授)等の日本側の専門家と意見交換を行いました。
【日本側有識者】
【開幕挨拶】 | 伊藤 憲一 | グローバル・フォーラム代表世話人 |
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【基調講演】 | 中谷 元 | 防衛大臣 |
【前半議長】 | 伊藤 剛 | グローバル・フォーラム有識者世話人/明治大学国際政策研究所長・教授 |
浅野 亮 | 同志社大学法学部教授 | |
佐藤 考一 | 桜美林大学リベラルアーツ学群教授 | |
鈴木 健人 | 明治大学准教授 | |
山田 吉彦 | 東海大学海洋学部教授 |
名字五十音順
【海外有識者】
ヒクマハント・ジュワナ | インドネシア大学教授(インドネシア) | |
グエン・ティ・ラン・アン | ベトナム外交学院南シナ海研究所副所長(ベトナム) | |
ファン・カン・ミン | ハノイ国家大学人文社会科学院院長(ベトナム) | |
ヴァージニア・ワトソン | ハノイ国家大学人文社会科学院院長(ベトナム) | |
【後半議長】 | デビッド・ウォルトン | アジア太平洋安全保障センター教授(米国・フィリピン) |
由 冀 | 澳門大学教授(中国) |
名字アルファベット順
「日米対話」会議資料
日米対話「激動の世界と進化する日米同盟:開かれたルール基盤の国際秩序存続のために」では、報告を行ったパネリストの方々にご用意して頂いた会議資料を、会場にて出席者の皆様に配布いたしました。
当日の会議資料は、PDF形式にて公開しておりますので下記ボタンからご覧下さい。
「日米対話」報告書
グローバル・フォーラム事務局は、当日行われた日・アジア太平洋対話「21世紀の国際秩序とアジアの海」においてのすべての議論をまとめた報告書を作成しました。
開幕挨拶では、伊藤憲一グローバル・フォーラム代表世話人より対話を共催した明治大学国際政策研究所・国際総合研究所及び西シドニー大学に対し謝意を述べるとともに、日本のみならずアメリカ、中国、オーストラリア、ベトナムといった世界各地から参加したパネリスト各位に対し心から歓迎の念を表しました。
基調講演には特別ゲストとして現役の国務大臣である中谷元防衛相が登壇しました。中谷防衛大臣はロシアによるクリミア併合やイギリスのEU離脱を例に挙げ、国際社会のバランス・オブ・パワーが変化しつつあることに警鐘を鳴らすとともに、北朝鮮と中国の軍事的脅威に言及すると、軍が政治に優越し民主主義が機能していない「先軍政治」の点で両国が共通していることを日本は認識しなくてはならないと強調しました。
セッションⅠ最初の報告者となったグエン・ティ・ラン・アンベトナム外交学院南シナ海研究所副所長は、南シナ海に関する3つの問題点、すなわちベトナムと中国の間で2度武力紛争に発展した領有権問題、国連海洋法条約に基づく海洋権益の問題、そしてこれらの紛争を解決するメカニズムが確立していないという問題を提起しました。
日本のパネリストとして最初に登壇した佐藤考一桜美林大学リベラルアーツ学群教授は、「中国の海洋攻勢、習近平の人民戦争」と題して海軍から海上民兵まで中国の実力組織の組織構造とシームレスな海洋進出戦略について詳細且つ具体的に報告するとともに、それを踏まえて海上保安庁の能力を大幅に向上させる必要性を訴えました。
その後も、様々な立場からパネリストが報告を行い、侃々諤々と意見を戦わせました。また、本対話の特徴とも言える各セッションに設けられた自由討議の時間には、高い発言意欲を持った出席者諸氏も議論に加わり自由闊達な討論が行われました。
全体の議論やパネリストの詳細等については報告書に詳しく記載されておりますとともに、その一部が動画として公開されておりますので、ご覧ください。
報告書全文は、PDF形式にて下記ボタンからご覧になることができます。
「日米対話」メモ
本対話では、当日の議論を早期に膾炙することを目的として、概要をまとめたメモを報告書に先駆けて掲載しています。
メモ全文は、PDF形式にて下記ボタンからご覧になることができます。