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2009-03-28 08:27

(連載)北朝鮮のミサイルと日本のミサイル防衛(2)

水野 勝康  特定社会保険労務士
 しかし、弾道ミサイル防衛(BMD)で実際に北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃できるかは別問題である。海上自衛隊は6隻のイージス艦を保有しており、搭載するSPY-1レーダーは弾道ミサイルを補足できる。しかし、過去にイージス艦「みょうこう」は捕捉できても、ミサイルに手出しすることはできなかった。BMDに対応したスタンダードSM-3ミサイルを搭載しているのは、「こんごう」と「ちょうかい」の2隻だけである。このうち、「こんごう」はミサイル迎撃実験に成功しているが、「ちょうかい」は失敗している。いずれも訓練の成績であるから、今のところ日本の手による迎撃成功の確率は2分の1以下と考えざるを得ない。

 航空自衛隊のPAC-3については、射程距離が20キロメートルと短い。一応迎撃実験には成功しているが、仮にミサイルを迎撃できたとしても、破片が日本本土に落下してくる危険性は回避できないであろう。それでも、迎撃に成功すればよい。少なくとも、本土直撃は回避できることを証明することになるからだ。問題は、これだけ大騒ぎして迎撃できなかった場合である。日本の弾道ミサイルに対する抑止力は大幅に低下することになる。当然、北朝鮮は増長するであろう。日本としては、このままの路線でミサイル防衛を進めるのか、それとも韓国のように発射前に基地を叩ける巡航ミサイルなどを装備するのか、検討しなければならなくなる。

 抑止力という観点から考えると、今のところは北朝鮮にとって、「確実に迎撃される」とは言えないまでも、「迎撃されるかもしれない」という点で、抑止力が働いていると言える。ところが、実際にミサイル迎撃を行って「迎撃できない」となると、かえってBMDが抑止力にならないことが証明されてしまうからである。自衛隊がどこまでミサイル迎撃に自信があるのかは不明だが、海上自衛隊の迎撃実験の結果から見て、ほぼ確実に迎撃できると言うのは難しいようだ。

 実際に迎撃を命令ずるのは、もう少し自衛隊の練度が高まってからの方がよいのではないか。もちろん、北朝鮮のミサイルが日本を直撃する可能性も否定できない。実際に直撃する可能性があるならば、迎撃できる確率はともかく、迎撃を命ずるのが日本国民の安全を守る立場にある政府としては当然のことであろう。しかし、宇宙ロケットかどうか境界の曖昧なものに対しては、今後の我が国の「抑止力維持」の観点から柔軟に対応してもよいのではなかろうか。(おわり)
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