国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-03-27 11:17

東南アジア諸国との「共生」を目ざせ

湯下 博之  杏林大学客員教授
 2月から3月にかけて、経済関係の民間調査団の一員として、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムを訪問した。日本と東南アジアの国々とは、良好な関係にあり、特に経済面での協力や関係は緊密であるが、最近は、これら諸国の発展に加え、中国の東南アジア進出や、上記の4カ国が含まれるメコン河流域開発の動き、また東アジア共同体構想や東アジア首脳会議といったこの地域の枠組みについての新しい流れもあって、日本と東南アジア諸国との関係も、かつてのように二国間関係を中心とした、かつ、与える者と与えられる者といった関係から、地域全体をも視野に入れた、かつ、共生を指向する関係へと向かっている。4カ国訪問を通じて日本への期待が強く感じられ、国により事情は同一ではないものの、共通して看取されたことが幾つかあった。

 第一に、各国とも日本からの投資の増大を強く希望した。日本は現在百年に一度の景気後退の中にあり、当面は海外投資どころではないといった悲観的ムードが強いが、先方の切なる希望を十分に理解し、景気回復後はこれに積極的かつ適切に対応することが、日本のためにも必要であり、その段階で望ましい成果が得られるよう、今から心構えと準備をしておくことが大切であると感じられた。投資に関しては、東南アジア諸国でのハード、ソフト両面でのインフラの遅れがよく指摘されるが、この面でも日本のODAをはじめとする協力により着実に改善が図られており、特にベトナムでは両国の官民共同の作業である「日越共同イニシアティブ」が今や第3フェーズに入って、インフラに限らず投資環境全般について改善が図られていることが印象的であった。単に先方に問題を指摘したり、注文をつけるのではなく、双方が一緒に双方の利益のための作業をすることの重みが痛感された。

 第二に、人材育成面での協力について強い希望が寄せられた。インフラ整備が進み、産業発展が進むにつれて、それを維持、運営するためにも人材が必要となる訳で、そのための協力への期待が表明された。また、技術の習得等のみでなく、日本的な仕事のマインドや日本の企業カルチャーをも学びたいとの願いが表明された。

 第三に、駐日大使の経験がある知日派のタイのカシット外相が、日タイ両国民間の相互理解増進のため、日本の大学でのタイ研究や東南アジア研究をふやすことや、観光宣伝に加えてタイ文化の日本への紹介の必要性について述べたことに代表されるように、日本との関係を経済や政治関係にとどめず、国民レベルのしっかりと根づいたものにしたいという意欲が感じられた。これらを通じて言えることは、東南アジア諸国は日本を兄貴分として共に歩み、共に繁栄することを希望している訳で、日本にとっても願ってもないことの筈である。日本が目を開いてこの期待に応えることが、双方の利益であることを国を挙げて自覚する必要があると思う。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム