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2009-03-26 07:56

「5月解散」説を分析する

杉浦正章  政治評論家
 自民党内から5月解散の合唱である。たしかに民主党代表・小沢一郎が“続投中”に選挙をやった方が有利に違いない。水に落ちた犬である敵対政党を、叩けるだけたたいて選挙戦を有利に持ち込むのは、マキャベリズムの基本中の基本だ。しかしこの戦略も小沢が“辞任カード”を切れば、一挙に粉砕されるという危険を内包している。5月解散の行方を分析してみる。

 自民党内は“小沢続投”を奇貨として最大限活用する雰囲気だ。続投が長引けば長引くほど支持率も有利になる。自民党内に平成21年度の補正予算案成立後の解散論が、ほうはいとして台頭しているのも、これを見据えているからにほかならない。とりわけ選挙対策の責任者らはそう感じている。選対委員長・古賀誠が「5月下旬から6月にかけて、2009年度補正予算案を通せば、信を問う時期もあり得る」と述べれば、首相側近の選対副委員長・菅義偉も「いつ選挙があってもおかしくない」と早期解散論だ。また前副総裁・山崎拓は「選挙の時期は近い」、元幹事長・中川秀直も25日「補正予算を執行できるようにして、5月に解散するのがベストだ」といった見方を示した。

これら早期解散論は、一にかかって、「小沢続投」で世論の民主党への批判が継続している内がチャンス、という判断が前提にある。鉄は熱いうちに打てである。加えて「西松ショック」で国対が呆けたような状態になり、本予算の年度内成立に協力せざるを得なくなった民主党が、恐らく補正予算でも早期成立に協力を余儀なくされるだろう、という判断もある。確かに5月解散は首相・麻生太郎にとって残された最大かつラストのチャンスかも知れない。しかし、流動性もある。民主党が早期解散不利とみて抵抗すれば、会期の延長が不可避となり、予算関連法案を60日条項で通すとなれば、6月3日会期末の会期を場合によっては7月下旬まで延長する必要が出てくる。7月8日から主要国首脳会議(サミット)、同12日には東京都議選があり日程もきつい。

 そしてこの早期解散論の最大のネックとなるのが、小沢が「続投やめた」の判断をすることであろう。小沢と菅直人、鳩山由紀夫の「続投3羽ガラス」が、事態の重大さに気づき、党再生を目指して「辞任カード」を切ることである。私が小沢なら、27日の代議士会や参院議員総会で辞任論が噴出するのに先立って、辞任を表明するがどうだろうか。そこを逃し、かつその後29日に予定される千葉県知事選挙で敗北すれば、もっと荒波が押し寄せる。世論調査も下がるのは確実。党内の亀裂は拡大する一方となる。逆に小沢が辞めれば、すべてにけりがつく。新代表の下で「新生民主党」をアピールできるし、「5月解散」への備えもすぐにできる。逆に自民党は、早期解散のチャンスを失い、任期満了選挙を余儀なくされるかもしれない。したがって5月解散論はまだまだ“逃げ水”のように確定できない。
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