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2008-10-22 09:38

(連載)抜本的な国際通貨制度の見直しを(2)

古屋 力  会社員
 またニクソンによって葬り去られてしまった「金本位制」も、ある意味でこういった自己増殖に歯止めをかける工夫であった。先哲は偉かった。いまやもう一度人類の英知を結集して、新たなルールと仕組みを考え、早急に構築する時期に来ていると思う。それではどうしたらいいのか。「通貨」を、人類が皆異存のない共通の価値に「本位」させるのである。糸の切れたタコのように大空に舞い上がってしまい、あげくの果てに墜落したタコのような「通貨」に、錨を結びつけるのである。換言すれば、あまりに無節操に資本が自己増殖しないように、紐を結びつけるのである。

 猛獣だって檻に入れるか、首輪をつけるであろう。やはり猛獣には「檻」か「首輪」が必要なのである。新たな「本位」が必要である。それで新たな「本位」とはか。人類が皆異存のない共通の価値とは何か?それは「地球環境」だと思う。しかし「地球環境」は曖昧模糊としている。分かりにくい。世界中の誰もが大事なものであると認識できる、単純で理解しやすい共通財って何だろうか。1つの候補は、カーボンである。温室効果ガス排出量を有限なものと認識し、グローバル・キャップをかけて、その希少価値に通貨をリンクさせるのである。さらにはそのカーボンそのものを通貨にするのである。

 もちろん、こういった仮説が現実のものとなるためには、通貨の基本的要件であるニューメレール(価値基準)として大丈夫なのか、決済の仕組みは大丈夫なのか、まだまだ排出権市場は小さいが、はたして世界の基軸通貨に発展できるのか、等々議論、検証すべきテーマは山積している。しかし、考え方を変えれば、いまこそこういった抜本的な国際通貨制度の見直しが必要なのであり、またいまならば可能であるかもしれない。反対やできない理由を羅列することは、愚者でもできる。しかし、むしろいま肝心なのは、未来志向的に何かできないかと、知恵を絞ることである。

 ケインズがいま生きていたなら、新しいもう一冊の『一般理論』をきっと書くであろう。そして間違いなく、その中の1章を費やして、ブレトンウッズの会議で敗れた幻の世界共通通貨「バンコール」の提案を、「グローバル・カーボン・マネー」という形で再度提言するであろう。これは筆者の単なる夢想であろうか。たわごとであろうか。この点はケインズに聞いてみなければ分からないが。(おわり)
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