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2008-10-09 13:27

常任世話人だより(2):「第42回外交円卓懇談会」について

村上 正泰  グローバル・フォーラム常任世話人
 今回の「常任世話人だより(2)」では、さる10月3日(金)に開催された第42回外交円卓懇談会について、所感を述べます。外交円卓懇談会とは、海外の専門家の来日の機会などをとらえて、グローバル・フォーラム、日本国際フォーラム、東アジア共同体評議会が共同で主催する、会員との率直かつ内輪な懇談の場ですが、今回は英国王立統合軍防衛問題研究所研究部長のジョナサン・イヤル氏を報告者に招き、「グルジア紛争後のロシアの外交政策」と題して開催されました。

 イヤル氏は、英国を代表する戦略理論家の1人として、欧州ではその対露観が注目されているひとですが、1996年にグローバル・フォーラムが「日欧対話」を組織した際には、欧州側論客の1人として来日しています。今回のイヤル氏の発言でとくに注目されたのは、「今回のロシアのグルジア侵攻で『ポスト冷戦』期は終った。ロシア国民は、ソ連崩壊を『抑圧からの解放』として歓迎するのではなく、『失われた栄光』として追慕している。我々も大英帝国の崩壊を経験したし、日本人も大日本帝国の崩壊を経験した。しかし、我々も日本人もそのような『過去の夢』を再び見ようとは思っていない。冷戦の終焉後、西側諸国はロシアに対して新しいパートナーシップ構築のための多くの協力を申し出て、提供してきたが、ロシア人はそれらにほとんど関心を示さず、逆に我々に対して受け入れることのできない対価を求めてきた。自らを『大国』と位置づけて、かれらの『過去の帝国』の再建を支援するよう求めてきたのである」という発言でした。

 今回のロシアの行動の背景を説明する言葉として、もっとも鋭くその本質を突いた説明だと思いました。いつまでも力の信奉者として「大ロシア主義者」でありつづけるロシア人への警告を込めた遺憾の意の表明といってよいでしょう。このあとのイヤル氏の「今回の事件を契機として『冷戦』が再来するのではないかという人もいるが、私は、一見冷戦に似通った情勢が現れることはあっても、冷戦の再来はないと考えている。その理由は、(1)今やロシア経済は世界経済に依存していること、(2)現在のロシアには冷戦期のソ連がもっていたような同盟国が存在しないこと、(3)軍事力において米国やNATOと比べ圧倒的な劣位にあること、の3点である。世界で南オセチア、アブハジアを承認した国がニカラグアしかいないということに、ロシアの孤立ぶりが象徴されている。『新冷戦』となれば、ロシアの敗北は必至である」という言葉も、いつまでも耳に残りました。

 当日のより詳細な「メモ」につきましては、近く日本国際フォーラムのホームページ(http://www.jfir.or.jp)に掲載されますので、ご関心のある方はそちらをご覧ください。
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