国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-09-26 18:40

構造改革イコール小泉改革ではない

湯下博之  杏林大学客員教授
 内閣が新しくなった。麻生新首相の下での最大の政治的関心事は、いつ衆議院総選挙が行われ、その結果がどうなるか、ということになった。政策面での与野党の論点については、これからしだいに明確になって行くものと思われるが、外交、安全保障面でのインド洋での給油活動の継続問題や近隣諸国との関係についての考え方がどうなるかが気になるほか、当面の最大の問題である経済政策についての基本的な政策がどうなるのかが気になる。経済の現状を踏まえて、痛みに対する手当てや経済の活性化を、選挙目当てのばらまきでない形で行うことが必要であるが、それを実現するための骨太の政策が打ち出されるのかどうか、心もとない。

 そのことと関連して気になるのは、最近では、経済構造改革の問題が特定の政治家、特に小泉元首相にのみ結びつけられてしまっていることである。小泉元首相が経済構造改革を強力に押し進めたことは事実であるが、経済構造改革は小泉元首相だけが唱えたものではなく、それ以前の何人かの首相も取り組んだ課題であった。その中で小泉元首相が多くの成果を挙げたことは事実であるが、他方、小泉元首相の改革は郵政問題に突出した重点が置かれる等の個性的な特色があり、「小泉構造改革」というべきものであった。ひるがえって、日本が必要としていた経済構造改革はどういうものであったかというと、それは「小泉構造改革」だけではカバーし切れない大きなものであったと思う。

 長期的に見ると、日本は第二次大戦後の復興を成功裡に実現したが、その後の諸条件の変化を踏まえた政策や仕組み等の手直しは必ずしもうまくできず、改革を必要としている。また、1980年代のバブルが崩壊した後は、設備の過剰、雇用の過剰、債務の過剰の「三つの過剰」を整理するとともに、生産性の低い分野を減らし、生産性の高い分野での経済活動をふやして、経済の成長力を回復することが経済構造改革の眼目であったと思うが、実際に起こったことは、「三つの過剰」を整理することだけであった。これでは、企業、特に大企業は身軽になり、利益が得られるようになっても、「雇用の過剰」の整理の結果、正社員雇用は減り、国全体として経済が上向くことにはなりにくいことは当然である。

 経済が全体として成長するためには、経済構造改革の残された部分、即ち、生産性の低い分野を減らし、生産性の高い分野での経済活動をふやして、経済を活性化し、経済の成長力を回復することが必要である。それが、今、日本が必要としている経済構造改革であり、そのような改革を前記の長期的な諸条件の変化を踏まえて行うことが大切である。構造改革イコール小泉改革といった把え方ではなく、痛みに対する手当てはしながらも経済を活性化するために必要とされる諸施策について、頭の整理が必要だと思う。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム