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2008-09-09 07:40

民主党は“財源白紙委任”を求めるのか

杉浦正章  政治評論家
 記者会見で政権構想の「財源問題」の核心を突かれると、民主党代表・小沢一郎は、明らかにいら立った。そして質問を「財務省のマインド・コントロールにある」と批判した。有権者の誰でも持つ疑問に答えずに、まるで「政権を取れば財源は出てくるから“白紙委任”せよ」と言わんばかりの発言だ。これは今後自民党にとって財源問題が民主党の“急所”になることを物語っている。小沢の発表した「新しい政権の基本政策案」は、「今になって変えてはおかしい」という小沢の指示で、民主党従来のマニュフェストを踏襲している。一般大衆にうけのよい政策を並べているが、その財源がはっきりしない。年金改革だけで15兆円、公立高校の無償化などに3.5兆円、農家の戸別所得補償に5~6兆円、暫定税率廃止に伴い2兆6000億円など、合計で30兆円にのぼる政策の財源根拠が示されていない。ばらまきの批判が出るゆえんである。

 代表選挙出馬表明に際しての小沢の8日の記者会見は、「何としてでも政権を奪取する」という発言が象徴するように、政権獲得に向けての覇気ばかりが目立ち、公約実現に当たっての工程を冷静に語りかけるものではなかった。小沢は「財源がないという議論は、官僚の主張をそのまま言っている」と財源論を批判し、「我々の政権では、不要・不急なものをやめるから、必要を満たす財源は十分にある」と述べたが、これではあまりに抽象的だ。9日付けの朝日新聞も「基本政策案は期待はずれだった。農業者や漁業者への所得補償など多額の財政支出を伴う政策を並べたのに、相変わらずその財源の輪郭さえはっきりしない」と真っ向から批判。読売新聞も「抽象的な説明だけでは、国民は十分納得すまい」と切り捨てた。

 小沢のみならず、民主党幹部の発想には、「政権を取れば財源は出てくる」という基本認識がある。菅直人も「民主党政権は、国のかたちを根本から変える革命政権だ。2、3年は埋蔵金だろうが何だろうが、一時的に使えるものは全部使い、徹底的に改革する中で、必要な財源を取っていく」と述べている。うわさの域を出ない埋蔵金を根拠にして、国の重要政策を決めてゆくとは、あまりにも政権を目指す政党として無責任と言わざるを得ない。副代表・前原誠司が消費税の必要を誠実に訴えて袋だたきにあったことが象徴しているように、民主党の政策には虚構の影がつきまとう。自民党総裁選候補らも争点に取り上げ始めた。与謝野馨は「財源から言うと、ほとんどすべてで実現が難しい。財源をどう調達するかも言わないと、政策として一貫性を図れない」と批判している。今後総裁選、引き続く総選挙における絶好の論争点を、小沢の基本政策案が自民党に提供した形となった。
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