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2008-09-08 08:54

外交的には最悪だった福田辞任のタイミング

伊奈久喜  新聞記者
 福田康夫首相辞任のタイミングは、総裁選を盛り上げ、衆院選挙を有利にしたい自民党の利益を考えれば、最善だった。その意味で熟慮の末の鮮やかな出処進退である。健康問題で投げ出した昨年の安倍辞任とは違う。しかし外交的にはそうはならない。国連総会に3年連続して日本の首相が欠席するからだ。結果は安倍辞任よりも悪い。

 2年前の9月下旬の国連総会の季節は、小泉政権から安倍政権への過渡期であり、小泉首相も麻生外相も国連総会出席を見送った。2006年9月23日付け日本経済新聞社説は「国連外交より人事、では困る」の見出しで「自民党総裁選に伴う政権移行期ではあるが、国際的には常任理事国を目指して派手に運動した国が手のひらを返したと映る。首相、外相の重大な判断ミスである」と批判した。この政権交代が小泉氏の自民党総裁の任期切れに伴うものだったから「総裁選と国連総会の日程が接近する根本原因は、総裁任期が九月末で切れる点にある。自民党に国際感覚があれば、投票日を二十日ではなく、少なくとも一週間前に設定していたろう。そうすれば、ニューヨークで政権移行を理由に日本の存在が見えなくなる事態はなかった。自民党が政権与党であり続けようとするなら、深刻な反省を要する」と書いている。 

 昨年は安倍政権から福田政権への過渡期だった。2007年9月19日付けの日本経済新聞社説は「国連総会での日本不在の連続を避けよ」との見出しをつけ、「必要なのは、(1)組閣で町村信孝外相を再任して、直ちにニューヨークに派遣する(2)即戦力となる人物を外相に任命し、同様の措置をとる(3)町村氏に政府代表の肩書を与え、事実上の外相として国連で行動させる――のいずれかだろう。官僚任せを2年も続ければ、日本は内向きの国とされ、国際舞台での影も薄くなる。外交力の低下につながる」と書いた。結果的には福田政権で外相に就任した高村正彦氏が、とるものもとりあえずニューヨークに行った。福田首相は(2)の選択をした。

 さてことしは9月22日が自民党総裁選、それから臨時国会での首相指名、組閣となる。日程的に去年の手は使えない。ことしはG8の議長国として福田首相の国連総会出席を機に様々な会談がなされるはずだった。突然の福田辞任の結果、21日に予定していた日中韓首脳会談も延期された。「外交の福田」を首相が自認していたとすれば、辞任表明は、それに値しないタイミングでなされた。その後の首相は、自衛隊の高級幹部会同を欠席し、記者団とのやりとりもやめたという。やはり投げ出しだったのだろう。
 
 福田首相が北京五輪の日本選手団に「せいぜいがんばってください」と「激励」したことが批判された。選手たちに無用なプレッシャーにならないようにとの気遣いだったのだろうが、一般的には伝わらなかった。この言葉を借りれば、少し休んでから福田赳夫元首相が熱心だったOBサミットで「せいぜいがんばってください」といいたい。OBサミットは宮沢喜一元首相に引き継がれたが、宮沢氏亡き後、塩川正十郎元財務相がオブザーバーで出席している。福田康夫氏がメンバーになれば、歓迎される。
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