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2008-08-18 19:12

(連載)野球とアメリカ(1)

岩國哲人  衆議院議員
 今日は夏の高校野球の決勝戦。日本全国の高校球児たちの夢の頂点に立つチームが栄冠に輝く日がやってきた。私にも野球につながる多くの思い出がある。1945年8月、日本は戦争に敗れ、学校の教科書も教育方針も、すべてが変わった。アメリカの社会を知るためにアメリカの映画を、アメリカを好きになるために新聞では毎日アメリカの漫画を見ていた。アメリカの言葉だからと英語を勉強し、アメリカのスポーツだからと野球に熱中し、アメリカの食べ物だからとパンを食べた。米ではなくパンを食べたら頭がよくなると言われて、食べさせられたが、食べた割には頭がよくならなかった。

 私は夏休みに必ずやることが三つある。まず最初にお盆のお墓参り。東京はもちろん、ニューヨークにいてもロンドンにいてもパリにいても、欠かしたことはない。二つ目は中学校、高校の同窓会に出席すること。そして三つ目、夏の甲子園に必ず出かけること。はじめて訪れた3才の時から数えれば、甲子園との縁は今年で70年になる。東大2年生の夏からの連続回数で言えば、21年間の海外勤務期間を含めて夏の甲子園には「52年連続出場」という記録を更新中ということになる。準々決勝、準決勝の二日間、私は必ず甲子園に座っている。父が残した最後の写真は、4才の私を甲子園で撮ってくれた写真だった。墓参りにも行くが、甲子園にいる時、父と二人で野球を一緒に見ているような気がするのだ。

 私も野球が好きだった。小学校、中学校と、野球部に入ってピッチャーをしたり、ショートをしたり、そして周りの学校と試合をして勝ったり負けたり、いろんな楽しい思い出がある。しかし、これはという決勝戦では一度も勝てなかった。決勝戦に勝てなかったピッチャーの意地だと思って、甲子園でも決勝戦だけは見ないことにしている。東京大学に進み、野球部で2年間遊んでいた。この大学も優勝には縁がない。縁がないどころか70連敗という記録さえつくっている。しかし、東京大学のすごさはここにある。六大学の他校なら、50連敗する前に野球部は解散しているだろう。東京大学は解散するどころか、部員はそれでも野球を続けていたからだ。

 出雲という名前は全国の人に知って頂いて、有難い名前だが、夏の甲子園には一度も出たことがない名前である。私は毎年、甲子園に出かけて、いつになったら出雲という名前が夏の甲子園のスコアボードに出てくるのか、待ちくたびれているうちに、市長選挙に出ることになった。多くの集会で、出雲をこう変えたい、こうあるべきだと話しながら、いつも言っていたことは、「出雲の高校が夏の甲子園に出る。それが私の夢で、それが実現するまでは、市長をやめない」ということだった。自分の熱い思い、願いというのは口に出して言ってみるものだ。市長になって最初の年の7月28日、出雲商業が優勝候補の松江東を破って優勝し、初めて出雲という名前が夏の甲子園に出ることになった。出雲ドームのマウンドは甲子園の黒土で作られている。球運に恵まれない出雲の子供の励みになるように、私が無理にお願いして、頂いた10トンの土である。出雲ドームは私の木の文化への思い入れから、鉄筋や、アルミ、コンクリートなどを使わない木造りドームとして、有名になっている。(つづく)
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