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2008-07-11 21:25

(連載)ムードに流されなかった地球温暖化対策(1)

木下博生  全国中小企業情報促進センター参与
 私は、4月5日の本稿への投稿「ムードに流される地球温暖化対策の危険」の中で、「地球温暖化対策はムードに流されるべきでない」と述べた。去る7月7日から9日まで開かれた北海道洞爺湖サミットでは、地球温暖化が一つのテーマとして取り上げられたが、2050年までに温室効果ガスの排出量を50%削減するという目標についての合意は行われず、「目標というビジョンを国連気候変動枠組条約の締約国と共有し、この目標をこれらの国とともに検討し、採択することを求める」という曖昧なもので終わった。具体的な成果がなかったという意味で、これに対する批判的な意見も見られるが、私はこれくらいが適当だったと思う。

 そもそもガス排出量の50%削減目標を作ることに熱心だったのは欧州諸国であるが、これらの国の為政者は50%削減の意味を本当に理解しているのであろうか。炭酸ガスの排出量を半減するということは、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の消費量を、現状の半分にすることである。いくら省エネルギー技術が進んでも、現在の国民所得規模を維持あるいは拡大しながら、消費量を半分にすることは、およそ不可能である。原子力発電所の増設に否定的なドイツのメルケル首相は、今後増加する電力の需要を何で賄おうと考えているのであろうか。風力や太陽光発電などのクリーン・エネルギーを利用すると主張するかも知れないが、これらは量も限られるし、設備を作り、維持するために意外と大量のエネルギーを必要とする。そのためのエネルギー源の大部分は化石燃料なのである。

 今度のサミットでは、世界経済の現状について意見交換がなされた。そのなかで、石油や食糧の価格上昇について強い懸念が表明された。石油については、供給国側に対し、短期的には生産や精製能力の拡大を求めると同時に、長期的には今後上昇するグローバルな需要に応えるため、生産能力の拡大ができるような投資環境を整備すべきだと、世界経済に関する宣言の中で述べている。揚げ足取りみたいな言い方になって恐縮だが、石油など化石燃料の消費を大幅に削減しようと議論しているサミットにおいて、石油の増産を産油国側に求めるというのは、どういうことであろうか。石油価格の大幅上昇は、いわば「炭素税」のようなものである。使い切れないぐらいに増えているオイルダラー収入を、消費国側の省エネルギー関連の設備や技術開発投資に補助せよ、と要求するのならまだ分るが。(つづく)
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