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2008-07-08 09:54

(連載)国際経済学会世界大会からの報告(3)

池尾愛子  早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
 関連して、米カリフォルニア大学バークレイ校のオブストフェルド氏(日本銀行金融研究所顧問)も「金融政策と国際(外貨)準備」をテーマにして講演し、金融経済データを提示した上で、現下の国際金融のグローバル不均衡が史上前例のないものである、との危機感を示したことに触れておこう。彼の講演を聴いていると、戦後の国際金融史は、金にリンクされた米ドルを基軸とする固定相場制(これも史上初であった)が構築され、その安定性はIMFが担うというシステムが、ブレトン・ウッズで合意された時点を頂点に、米ドルの国際的地位が下降していく歴史であったことが改めてわかる。彼は講演の中で、「現下の危機は、1968年型か1973年型か」との問いを設定し、「1973年型」に近づいているとの結論を示した。

 1968年には基軸通貨の米ドルを補完するためにIMFのSDRが創出される流れになり、1973年には主要各国はフロート制(変動相場制)に突入したのである。彼も言及したように、1971年8月にはニクソン米大統領によって金と米ドルの交換が停止されたことも忘れてはならない。国際金融制度の調整は恒常的に行われてきており、そして現在は確かにかつてないほど大きな転換点なのかもしれない。米ドルの地位の更なる低下は確実であり、新しい秩序を模索して、ここでも国益や地域益が熾烈にぶつかり合うのかもしれない。また、金融分野は国内・国際レベルの両方を通じて、情報通信革命の影響を極めて大きく受ける分野であるとともに、経験や歴史の経路に依存して展開してきていることも事実である。

 そして、アメリカの経済学者たちが発言力を強めようとしていることが感じられる一方で、アメリカ政府がどこまで彼らの諸提案を採用するのかはわからない。しかし、アメリカ以外でも(遅れている国では)、データベースへのアクセスを容易にして科学的な研究を進める機会を増やし、国益が絡む議論については産官学が共同して整理していく必要があるように思われる。なお、青木昌彦新会長が組織する2011年のIEA世界大会の開催地(北京)については、議論中でまだ決定には至っていないとのことであった。(おわり)
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