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2008-07-03 17:35

(連載)米国と北朝鮮の手打ちに翻弄される日本

石川純一  フリージャーナリスト
 俗物極まりない凡庸な政治家が、自分のポストの任期がまもなく切れるのを控え、何とか後世に語り継いでもらえるものはないかと腐心し、これまた俗物極まりない稀代の独裁者が、自分の命が残り少ないことを考え、何とか自らの王朝を守ろうと頭をひねった結果が、互いに結び付いた。北朝鮮の核をめぐり、ブッシュ米政権と金正日の北朝鮮が己の利益を追求して生まれたのが、北朝鮮の核計画申告書提出である。

 東京都の石原慎太郎知事は6月27日の定例記者会見で、米政府が北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除すると発表した問題について、「米国は(拉致被害者を)忘れないというが、結局アメリカは逃げた。日本人は無視された。米国が『拉致問題忘れませんよ、忘れませんよ』ってね、猫なで声で言ってもらってもね、そんなもの誰だって満足しない」とこの動きを痛烈に批判した。国内のメディアを総なめにしたニュースの概要は、次のようなものだ。もっとも、これは、石原知事が喝破したごとく、実は誰もが予想していたことなのである。畢竟、外交は自国の利益、権益の追求の延長線上にあって、それ以外の何ものではないということである。

 中国外務省は6月26日、北朝鮮が核問題をめぐる6カ国協議の合意に基づく核計画申告書を提出したと公表。これを受けてブッシュ大統領はこの日、北朝鮮に対する経済制裁を撤回し、「テロ支援国家」指定を解除すると言明。この指定解除は、直ちに議会に通告されて、通告から45日で発効。1988年から約20年間にわった米側の指定解除で、米朝関係は、将来的な正常化に進むことになる。韓国政府当局者によると、核計画申告書は約60ページあり、その中には(1)核施設リスト、(2)プルトニウム抽出量とその使途、(3)ウラン在庫量、が盛り込まれている。しかし、肝心要の核兵器に関する情報は含まれていない。2007年10月の合意で、北朝鮮は同年末までの核施設無能力化と核計画申告を約束したが、北朝鮮が申告されるべき内容に種々の難癖を付け、履行が遅れていた。

 米政府は今回の申告と、5月初めに北朝鮮から受け取った約1万8000ページに及ぶ寧辺の核施設の稼働記録を照合、核兵器の原料となるプルトニウムの保有総量を検証することは可能と判断。北朝鮮は寧辺の核施設への米代表団の立ち入りを認めており、今後の検証にも協力するとみられる。だが、核兵器製造工場や核実験場の所在などは、明らかにされないため、検証も行われない。その一方で、米政府は、ウラン濃縮活動や海外への核拡散について、申告とは別文書で扱うことに合意済み。北朝鮮がウラン濃縮や拡散をどの程度行っているのか特定できていないことから、先送りを認めざるを得なかったからだ。(つづく)
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