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2008-06-10 07:59

勝ちすぎて、かえって小沢戦略にブレーキ

杉浦正章  政治評論家
 首相・福田康夫を始め自民党幹部が「解散しない」の大合唱だ。“解散恐怖症候群”はますます高じて来た感じだ。無理もない。首相にしてみれば「解散→総選挙敗北→責任取って退陣」の図式が目に見えているのに、「解散だ」などとは言えまい。首相は9日の会見で解散について「政策に支障のない時期に」と述べたが、内心は「政権に支障のない時期に」が本音だろう。早期解散を目指す民主党代表・小沢一郎の戦略が、勝ちすぎて、かえってブレーキがかかってしまっている。

 地方のしかも県議選レベルの選挙の与野党逆転が国政にインパクトを与えているのは、ひとえに沖縄県議選の争点が後期高齢者医療制度だったからである。民主党にしてみれば、「路線の正しさが立証された」(幹事長・鳩山由紀夫)と意気軒昂になるのも無理はない。鳩山は次期総選挙について、「今回はすべてを懸けた戦いで、日本の政治の中で1回あるかないかという大きな『関ケ原の戦い』になる」と述べているが、その通りだ。

 しかし、後期高齢者医療制度廃止法案といういわば民主党の持った“草薙の剣”に、与党側がおじけつき、“解散恐怖症候群”で寝込んでしまった図式では、なかなか解散に追い込めないのも事実だ。小沢戦略の真価が試される時でもある。小沢にしてみれば、高齢者医療制度の「最初のうまさが持続する」政局を維持しなければならないのであり、それには「福田問責決議案可決→国会空転→8月臨時国会も冒頭から空転→解散」がベストの戦略なのだろう。ただ「最初のうまさ」は、かたくなに福田が制度凍結か廃止を拒否し続ける限り、続く方向にあることは確かだ。国会閉幕後、いかに選挙ムードを維持するかが、小沢戦略のカギになろう。

 これに対して、自民党の戦略は焦点がぼけて、見苦しい。その最たるものは、参院を通過した野党4党提出の後期高齢者医療制度廃止法案について、衆院で継続審議とする方針を固めたことだ。同制度への国民の反発が強いことから、今国会では否決や廃案とはしないのだそうだ。しかし首相問責決議に対して衆院では「内閣信任決議で対抗する」(国対委員長・大島理森)というかぎり、これはおかしい。問責決議の争点は後期高齢者医療制度の是非であり、自民党は本来なら廃止法案を堂々と否決して、信任決議を可決するのが筋だ。廃止法案を否決できるのに否決しないで、内閣信任決議を可決させるのは、矛盾も良いところだ。司令塔が定まらず、大局が見えず、すべてを「国会対策」レベルで処理している実情を反映している。中途半端もよいところだ。 
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