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2008-05-27 19:19

インドネシアの残留元日本兵

西川恵  ジャーナリスト
 最近、インドネシアについて取材していて、同国に残留した元日本兵たちで作る「福祉友の会」が、高齢化の為メンバーが6人だけとなったことを知った。この問題を簡単に紹介しておきたい。

 第二次大戦直後の1945年8月17日、インドネシアは独立を宣言し、これを認めない旧宗主国オランダとの間で独立戦争が始まった。この時、独立軍に身を投じた元日本兵の正確な数はないが、ざっと700人と言われている。同国はそれから4年後の1949年、オランダの承認で名実ともに独立を達成したが、生き残った元日本兵は約250人。つまり、500人近い人が戦死もしくは行方不明になった。犠牲者が多いのは、実戦を知る元日本兵が火力に優るオランダ軍との戦いで、先頭に立ったからだった。中には悲劇的なケースもあった。

 インドネシア人仲間がオランダの流したデマ情報に踊らされて、元日本兵をスパイと思い込み殺している。元日本兵が独立戦争に加わった理由は様々だ。独立を求めるインドネシア人への共鳴。敗戦の空虚感を埋めるように馳せ参じた人。強制的に加わらされた人もいた。この間、多くは現地の女性と結婚し、生活基盤をインドネシアに築き、独立戦争後も同国に残った。無国籍となった元日本兵らは、日本政府の働きかけもあって、1963年スカルノ大統領令でインドネシア国籍を付与された。しかし「自力独立」の“神話”を堅持していた同国では、元日本兵の協力に触れるのはタブーで、これが公に認められるようになるのは1980年代になってからだ。

 この元日本兵が集まって、「福祉友の会」が結成されたのは1979年。約200人のうち107人が発起人として名を連ねた。同会では会報を出し、親睦、相互支援、日本人墓地の整備などの活動を続けてきた。しかし今、一世会員は100歳を最高齢に6人だけとなった。残留元日本兵の問題は歴史の一コマになろうとしている。
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