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2008-04-22 10:09

日本は北極圏外交に取り組め

河合正男  白鴎大学客員教授・元大使
 5月26日から3日間、グリーンランドにおいて北極海沿岸5カ国の外相級会議が開かれるそうだ。近年、地球温暖化の影響で北極海の氷が急速に解けている。早ければ2013年の夏には北極海の海氷は消滅するとも予測されている。その為に、将来の北極圏での海底資源開発や航路を巡って、各国の利権争いが起こっている。ロシアとノルウェーは、国連大陸棚限界委員会に北極圏の自国大陸棚についての権利を申請した。カナダは、北極圏の島での軍事施設建設を発表している。

 これらの動きに、わが国としてもしっかりと関心を持っていくべきである。北極海での資源開発や航路開設が進むことになれば、我が国にとっても資源確保や海運の上で重要になっていく。北極圏には石油や天然ガス、鉱物資源が豊富に存在すると見られている。もし北極海航路が開設されれば、北欧地域と我が国までの航路は、スエズ運河経由に較べて半分の距離になる。余り知られていないが、ノルウェーは世界第3位の石油輸出国であり、今後は天然ガスの生産も伸びていくと見られている。北極海航路により、これらの資源を直接日本に輸入することも可能になる。

 実際に、1995年には我が国の日本財団、ノルウェーのフリチョフ・ナンセン研究所、ロシアの中央海洋調査・設計研究所の3者の共同研究の一環として、ロシア船を使った実験航海が行われた。砕氷船が先導して、ロシア沿岸に寄港しながらの航海であった。現状では、夏の3ヶ月間程度は技術的に航行可能であるが、将来は通年航行も可能になるかもしれない。また、北極圏の資源開発としては、ノルウェー領スヴァールバル諸島についての特殊な条約がある。いわゆるスヴァールバル条約である。それまで領有権争いのあったこれら諸島を、この条約によりノルウェー領とすることを締約国が認めたが、同時に締約国は等しくこれらの島で経済活動を行う権利を有することも約定した。1920年に締結されたこの条約に、日本は他の13カ国とともに原加盟国である。戦前に、日本が既に北極海の問題に大きな関心を持っていた証左である。

 北緯80度に近いこの島に、ノルウェー外務省の招待で私も行ったが、夏でも氷に閉ざされたこの島で、各国が種々の活動を行っていた。わが国は、研究者が常駐して北極圏観測を行っているが、ロシアはいくつもの鉱区を持って、石炭を生産している。北極圏に関心を示したわが国の歴史は古い。わが国としてもこの海域の経済活動を重視して、国際的な議論に参画するよう、改めて努めるべきである。極東の国の関与として、中国にそのリーダーシップを奪われないためにも。
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