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2007-12-24 12:22

連載投稿(1)世界貿易長期展望プロジェクトを振り返る

池尾愛子  早稲田大学教授
 2007年には化石燃料や他の再生産不可能な資源の価格が上昇し、今後もさほど下がらない見通しが出ている。そのため、ビジネス現場で新たな対策(鍵となる資源の調達先の確保・拡大)が打ち出されたり、化石燃料など天然資源の問題の分析が研究者たちに降りかかったりしているように見受けられる。そして、資源ナショナリズムという表現もしばしば目につくようになっている。

 エネルギー問題の専門家たちは何年か前から、中国やインドの台頭により、原油価格が急上昇する局面がやってくると予想していたと思われるが、その時期が到来したのはようやく今年2007年であったという感触を持っているのではないだろうか。中国に焦点をおけば、1993年に原油の純輸出国から純輸入国に転じ、2000年から中国の石油石化企業の子会社の海外上場を始め、2004年に日本への原油輸出が止まったのである。1990年代末から中国の動向を踏まえた研究論文が(英語で)出始めたように見受けられる。

 資源問題について、もう少し遡って考察を始めると、1970年代の議論を振り返ることになり、資源問題と経済の成長・開発・貿易問題が絡んでいることが改めてわかる。ローマ・クラブの最初の会合(1968)と『成長の限界』(1972)に始まる委託研究成果シリーズが有名である。日本でも、1969年11月に産官学あげての大掛かりな『1985年世界貿易長期展望プロジェクト』(世界経済研究協会、赤松要理事長)が始まり、「1985年の世界貿易」を予測するという大胆な研究の成果の中に、板垣与一監修『世界の資源と日本経済』(至誠堂、1974)が含まれた。

 『世界の資源と日本経済』の巻頭では、資源問題をめぐるナショナリズムとインターナショナリズムが総論された。第1部「世界の資源と国際経済新秩序」では、資源と技術の概念が論じられた上で、世界の資源需給が予測され、越境企業の寡占化が進む状況と世界の資源政策、資源貿易の趨勢、数量と価格、国際的調和が論じられた。第2部「資源と日本経済」では、日本の資源問題研究が展望され、日本の資源政策の方向と民間企業の動向、海外資源開発の現地社会に及ぼす諸効果が分析され、1973年の石油ショックの問題と日本の産業構造への影響が論じられた。第3部「資源別分析」では経済界が協力して、エネルギー資源、核燃料(ウラン)資源、鉄鋼、非鉄金属、軽金属、農林水産資源が取り上げられた。巻末資料として、国連における天然資源に対する恒久主権に関する主要国決議などが収録されている。(つづく)
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