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2024-12-25 14:39

(連載1)日本国は台湾有事で第二のウクライナに?

倉西 雅子 政治学者
 非核保有国であるウクライナの運命は、同国と同じく核を保有していない日本国ともオーバラップします。「ブタベスト覚書」が存在しながら、‘核の傘’を提供する国が現れなかったように、日米同盟が存在していても、必ずしも‘核の傘’が開くとは限らないからです。核保有国と非核保有国との間の絶対に越えることができない軍事力の差は、NPTを遵守してきた非核保有国にとりましては死活問題となります。

 この点に注目しますと、東アジアにおける台湾有事は、アメリカを介して日本国をも第二のウクライナの立場に追い込むリスクがあります。アメリカと台湾との準同盟関係が日米同盟に連鎖する可能性が極めて高いからです。否、アメリカ側は既に自衛隊の参加を織り込み済みなのでしょうし、日本国側も効果的な日米合同軍事行動の実現を目指して着々と法整備を進めています。もっとも、米シンクタンクのシミュレーションに依れば、多少の犠牲を払ったとしても、何れもアメリカ側が台湾から人民解放軍を追い出し、最終的に勝利を収めるとしていますので、‘勝ち戦’の予測から日本国の参戦については楽観視する空気があります。

 しかしながら、中国は、‘負け戦’を認めるでしょうか。ウクライナ戦争では、ロシアは、通常兵器による戦いで敗北するぐらいなら、自国の「核抑止力の国家政策指針」に基づいて核兵器を使用すると公言して憚りません。中国の習近平国家主席もまた、自らの面子を保つためにも核兵器の最終的な使用を選択肢に含めていることでしょう。否、周辺諸国の反発から公表は控えているものの、政権内部にあって中国版「核抑止力の国家政策指針」が既に策定されていると考える方が妥当です。中国もまた、威嚇を含めて核の効果的な使用を自らの国家戦略に組み込んでいることでしょう。

 中国による核使用が一般的な予測の範囲内にあるとしますと、台湾有事における日本国の事実上の参戦は、台湾のみならず、日本国をも窮地に追いやります。両国共に非核保有国なのですから。最悪の場合、中国は、アメリカとの核戦争だけは回避したいがために、‘核の傘’が開かないことを見越して、米軍基地への攻撃を口実として日本国に対してのみ核攻撃を加えるかも知れません(日本国に対する核攻撃を機にアメリカの世論が硬化し、台湾防衛を断念して撤退に動くかも知れない・・・)。あるいは、米中両国が核の使用を自制しているとするパフォーマンスの下で、ウクライナのように通常兵器による戦争が‘だらだら’と続いてゆくとも考えられます。通常兵器戦であっても、兵器がハイテク化した今日では、その破壊力は飛躍的に高まっています。‘超限戦’ともなれば、生物化学兵器の使用やサイバー攻撃等もあり得ることとなります。何れにしましても、日本国並びに日本国民の被害は、第二次世界大戦時を凌ぐかも知れないのです。

 中国の習近平国家主席が台湾侵攻を決断する時とは、自国の勝利を確信するか、あるいは、勝敗に関係なく、第三次世界大戦シナリオにあって世界権力によって命令を受けた時となりましょう。今日の国際情勢を見ておりますと、あたかも連携するかのように各国が陣営形成に急ぐ節が見られ、後者の可能性の方が極めて高いように思われます。この場合、日本国の危機はさらに深まります。日本国の破壊や人類支配が、第三次世界大戦を引き起こす目的の一つであるのかも知れないのですから。

 非核保有国の安全をどうのようにして護るのか、と言う問題は、今や日本国のみならず人類共通の緊急課題でもあります。この問題に関連して、昨今、トランプ次期大統領は、NATOからの脱退を仄めかして周囲を慌てさせています。その真意はアメリカの負担軽減にあるともされますが、やがては日米同盟の終了をも言い出すかも知れません。それが、交渉上の‘ブラフ’であれ、第二次世界大戦後のアメリカを中心とした同盟網による‘西側’の安全保障体制は、今日、重大なる転換期を迎えつつあるとも言えましょう。そしてそれは、今後、国際社会はどうあるべきなのか、という、NPT体制の見直しを含めた全人類の未来にも関わる重大問題であると思うのです(つづく)。
 
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