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2022-09-16 20:32

中国本土と韓国について

真田 幸光 大学教員
 私は、中国本土は今、間違いなく、覇権国家を目指していると見ています。アヘン戦争によって国土を蹂躙された屈辱を忘れないと、かつて私のビジネスパートナーであった中国人ビジネスマンが言っていましたが、そうした考え方は広く人民にも浸透しているのではないかと感じています。そして、そうした思いをただただぶつけるのではなく、この国は、戦略を持って具現化しようとしていることに私は中国本土という国の底力を感じます。即ち、中国本土は現在、外国には依存しなくても14億人の民を生かしていけるような国作りを始めており、私は、これを、「いざとなったら鎖国できる国作り作戦」と呼んでいます。
 
 そして、その上で、中国本土は、世界の国々は中国本土と交流しないと生きていけない国にしてしまうという、「中国本土無しでは生きていけない国作り作戦」を展開、その両面作戦で、覇権国家を確立させようとしていると思われます。そして、中国本土の産業発展に貢献した国や企業が不要となると上手に撤収させ、可能であればその設備を接収するといった戦略も使い、国内産業力の強化を着実なものにしてきたとも言えましょう。
 
 こうした中、中国本土の戦略に翻弄されてきた韓国企業の中国本土離れは加速化してくる可能性があります。例えば、本年5月、三星グループの研究開発拠点1期の竣工式がベトナムで本格的に始まりました。総額2億2,000万米ドルを投資し、ハノイ市に東南アジア最大の研究開発センターを建設するプロジェクトを三星グループは開始し、年内には完成する予定となっています。三星ベトナム複合団地の責任者であるチェ・ジュホ氏は、「ハノイの研究開発センターは、ベトナムを戦略的生産基地に発展させるという三星グループの意思を示すものである」と力強く発言しています。三星電子は2018年以降、中国本土の深圳、天津などにあった通信装備・スマートフォン工場をベトナム、インドなどに移転してもいることはご高尚の通りであり、更にそれを加速化させるということでありましょう。同じく、SKグループもこれまでの中国本土重視戦略を修正したと見られています。SKグループは1991年、韓国企業として初めて北京支社を設立し、通信、ガソリンスタンド、半導体、電池事業に積極的に投資してきた積極的対中進出韓国企業でありましたが、最近は欧米、東南アジアに投資先を拡大しています。
 
 SKハイニックスは昨年、米国のインテルのNAND型フラッシュメモリー事業部を買収し、SKオンは計5兆ウォンをかけて、米国に大規模な電池工場を建設することを決めています。チェ・テウォンSK会長は、米国のバイデン大統領とテレビ会談を行うほど、米国内での地位も変わったと見られています。韓国の主要企業は中国本土に偏り過ぎていた生産拠点と販売市場を多角化する再編に乗り出しているとも言えましょう。主要企業は中国本土での投資と人員を縮小する一方、米国、欧州、インド、東南アジアなど中国本土以外での投資を増やす動きを見せていると言えます。果たして、こうした韓国企業の対中戦略は今後どのように変化していくのか、注目をしていきたいと思います。そして、中国本土の韓国に対する今後の仕打ちの仕方も注視したいと思います。
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