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2022-09-06 19:49

(連載1)経産相「シリコンバレー詣で」の時代錯誤

大井 幸子 国際金融アナリスト
 少し前に、政府が今後5年間に計1千人の起業家をシリコンバレーに派遣するというTV報道があり、当時経産大臣だった萩生田氏が視察団を従えてゾロゾロとシリコンバレー詣でをする映像が流れました。私は「まだこんな時代錯誤なことをやっているのか」と驚き、次に「誰のカネでシリコンバレー詣でか」という怒りが湧いてきました。月刊誌ファクタ9月号には「恥の上塗り”シリコンバレー1千人派遣”計画」と言う記事が出ました。記事の内容は、「日本企業や団体がシリコンバレーに大挙して押し寄せても、目的のない表敬訪問を繰り返す観光気分で帰って行くだけで、本場のベンチャー企業からは時間泥棒と忌み嫌われている」、「自らの大企業病を引きずって米国まで行って情報弱者であることを曝け出している」といった手厳しいものです。
 
 私もこの記事には同感です。何よりも起業家というのは、自分でカネを作って、命懸けで勝負に出るものです。これが資本主義の基本です。政府の資金(=国民の税金)を背負った官僚や大企業のサラリーマン経営陣が事業リスクの本質や実務を知らずして、厳しい競争に晒されているシリコンバレーで何を教えてもらおうというのか?
 
 高級官僚や大企業経営陣は毎月給与を受け取ります。さらにボーナスもあります。社会的身分は保証され、黙っていても口座に毎月キャッシュが入ってくるのが当たり前の生活です。自分のカネは保証されており、自分のカネを政府や会社のために事業リスクに晒すことはないです。明日の資金がない!といった恐怖を体験せずに起業家の心理は理解できないでしょう。一方、起業家はまず自分で元手の資金を作ります(自己資本)。加えて、他人からも投資してもらいますが、初期段階ではエンゼル投資家に事業計画を説明して回り、彼らが一緒にリスクを取ってくれるように説得しなければなりません。
 
 この資金集め/資金調達の過程は結構きついです。「あんた誰?以前の実績は?」と問われ、「口では何とでも言えるよな」と冷ややかにあしらわれ、それでも協力者を募っていく。そして、開発から事業化の段階に入ると、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドや機関投資家からの資金調達が必要になります。新規事業の市場性などプロの投資家や専門家に厳しく査定されますし、また、競合他社との競争も厳しくなります。(つづく)
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