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2022-07-13 16:07

(連載1)核兵器の自衛的使用の問題

倉西 雅子 政治学者
 フランスの著名な人類学者であるエマニュエル・ドット氏は、今日、日本国の核保有を支持する稀な知識人の一人です。外的圧力もあって、なかなか核保有を言い出せない日本国にとりましては、海外の識者からの指摘はありがたいお話なのかもしれません。何故ならば、国際社会、少なくとも各国政府によって構成される国際政治の世界では、必ずしも言論の自由が保障されているようには見えないからです。
 
 日本国の核保有を支持する理由としては、日本国の独立国としての自立性、並びに、米国依存の安全保障の脆弱性の克服等を挙げております。同見解は、対米追従を回避するために核保有国となったフランスのド・ゴール路線とも一致しています。もっとも、ドット氏は、改宗ユダヤ人の家系に生まれており、その思想には、共産主義への強いシンパシーも伺えます。以前の論説では、対米バランサー、あるいは、抑止力としてのロシアの役割を高く評価していますので、地政学的な二項対立の思考枠組みへの強い拘りも見られます。この点において、全諸国による核の抑止力の開放を主張する筆者の見解とは大きく違っているのですが、力の抑止力、あるいは、バランス・オブ・パワーによる平和という文脈において、日本国の核の保有の議論に一石を投じているのです。
 
 ドット氏の主張は、民間の言論界にあっては核保有の議論をおこなう自由な空間が確保されていることを示すのですが、上述した国際政治の世界では、様相が随分と違っています。非核保有国の政府が核保有の議論を提起しようものなら、核保有国の大国から’犯罪国家視’され、有形無形の圧力がかかってきそうなのですから。先日、アメリカの政府高官も、NPT体制が核戦争から人類を救ったかのような、高い評価を与えていました。
 
 しかしながら、仮に、国際政治の世界にあっても、何らの圧力や脅しもなく、国家間にあって自由な議論が許されるならば、核保有国は議論に負けてしまうのではないでしょうか。一部の大国に特権を認める不平等条約である点が最たるものなのですが(一般国際法としての要件を満たしていない)、核兵器の拡散が国際の平和にとりまして看過できない脅威であるならば、それは、端から中小国を信用できない危険な国と見なしていることになり、中小国からしますと失礼千万となりましょう。(つづく)
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