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2022-06-02 20:45

(連載1)米大統領の日本の常任理事国入り支持の真意とは

倉西 雅子 政治学者
 政治の世界では、解釈によって意味内容が180度も変わってしまうことがままあります。5月23日に開かれた日米首脳会談の席にあって、アメリカのバイデン大統領は、岸田首相に対して日本国の国連安保理の常任理事国入りを支持したと報じられています。この発言も多分に漏れず、既に解釈論争を引き起こしているようです。
 
 第1の解釈は、外交的なリップサービスであったというものです。言葉で常任理事国入りを支持したとしても、それが実現するにはあまりにも高いハードルがあります。先ずもって国連憲章を改正する必要がありますので、同手続きをクリアするだけでも気の遠くなるような時間を要することでしょう。国連総会での改正案の採択には全加盟国の3分の2の賛成票を得る必要がありますし、たとえこの要件を満たしたとしても常任理事国を含む3分の2の加盟国が自国の憲法手続きに従って批准を完了しなければ効力が生じません。今般の北欧二カ国のNATO加盟申請に際しては、トルコが難色を示したことで、当初予測されていたような’スピード加盟’とはならないようですが、日本国の常任国入りには、改正手続き上のより厳しい難関が待ち構えているのです。アメリカ側も、この点は十分に承知しているでしょうから、リップサービス論に従えば、アメリカは本音では現状維持を望んでいるのと同じということになりましょう。
 
 第2の解釈は、ウクライナ危機を機にアメリカが国連改革に乗り出す意欲を示したという、最も常識的な見解です。同危機では、ロシアが常任理事国であっために国連は全く機能せず、その無力さを露呈することとなりました。国連の機能不全を解消するためには、国連における決定手続きを改革する必要がありますので、アメリカは、訪日に際して以前から議論されていた安保理常任理事国のメンバー拡大問題を提起したことになります。
 
 第3の解釈は、アメリカが、ロシアさらには中国を現行の国連から排除し、日本国とドイツを両国の代わり国連の常任理事国に据えたいという意向を示したというものです。国際社会全体から見れば、それは、国連の普遍性の喪失、つまり、世界が分裂することを意味します。かのダボス会議でも「ロシア戦争犯罪館」が設置され、ロシアからの出席者はいませんでしたが、それは世界の今を表現したかのようです。(つづく)
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