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2022-02-01 19:44

(連載1)黒田日銀総裁に向けた財務官OBの忠告

中村 仁 元全国紙記者
 米欧がインフレを警戒して、長期にわたる大規模な金融緩和から抜け出そうとしています。日本では、史上空前の財政拡大が異次元金融緩和と直結しており、日銀は身動きが取れず、もがいています。13年4月から異常な金融緩和を積極的に続けてきたのは、黒田総裁の個人的な金融政策思想によるところが大きく、安倍元首相がそこに目をつけ、アベノミクスのパートナーとして引き込んだとみるのが正解でしょう。異次元金融緩和は当初から、正統派からの否定論と、安倍氏寄りからの肯定論が真っ向から対立してきました。黒田氏個人の金融政策思想の特色が論じられることが多く、その一部を紹介したいと思います。
 
 黒田氏は財務省出身の財務官経験者です。国内の財政政策のトップである事務次官、国際金融・通貨政策のトップである財務官が財務省(旧大蔵省)の双璧をなしています。次官グループ、財務官グループは、それぞれ結束が固く、現役に対する影響力も持っています。財務官グループの中の2人から、黒田氏の金融政策をどうみるかについて、別々に話を聞かされたことがあります。1人は国際金融局長の経験者で、黒田氏が部下の課長として仕えたことがあります。「黒田君は、当時から金融政策で物価水準をコントロールできると信じて疑わない。だが、物価水準は様々な国内要因、海外要因で決まる。国内要因でも、金融財政政策、産業政策、社会的動向など多様である。金融政策だけで決められるものではない」と。「黒田君は海外留学(英オックスフォード大)した時、マネタリズム(経済のマネタリーの側面を重視する経済学)にはまったのだろう」とも。
 
 黒田氏は13年3月に日銀総裁に就任し、国会で「物価については、中長期的には金融政策が大きく影響を与える」、「金融政策のみで物価目標の達成は可能である」と述べたと、報道されました。課長当時の主張を総裁就任時まで持ち続けたのです。同4月に「消費者物価上昇率2%、通貨供給量を2倍、2年で達成」という目標を掲げました。国内閉鎖型の経済、物価と通貨供給量以外の条件を不変とすれば、理論的にはそういうことになるのでしょう。
 
 そのマネタリズム(貨幣数量説)を現実の経済政策に持ち込むには、様々な留保条件、付帯条件をつける必要があります。それにもかかわらず「2年、2倍、2%」という単純な目標を掲げたのは不用意でした。実際に、コロナによるサプライチェーンの混乱が招いた供給不足、経済回復に伴う需要増、原油高などを背景に海外で物価が上がり始めています(欧米で数%)。日本は上がっている輸入物価が円安の影響でさらにあがり、消費者物価は今年、2%は上がるという民間の見通しもあります。(つづく)
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