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2007-08-09 20:25

テロ特措法の議論に向けて

鈴木馨祐  衆議院議員
 日本が今後進むべき方向を考えた時、アメリカとの関係というものは避けて通ることが出来ないものである。日本が位置する極東地域に存在するのは、日本、アメリカを除けば中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシアであり、この中には対日スタンス、価値の共有という観点から日本にとり懸念材料になりうるものもいくつか含まれていることを考えれば、地域の安定や日本の安全保障の観点から東アジア地域におけるアメリカのプレゼンスというものは、少なくとも現段階では日本にとって不可欠なものと考えざるを得ない。

一方でアメリカという国の特殊性を我々は忘れるわけにはいかない。アメリカは非常に大きな国であるものの、その実大西洋、太平洋に囲まれ、その近辺に現実的な脅威が存在していないという地政学的環境にある。すなわちアメリカはある意味で島国であり、このことが意味することは、アメリカが自国の安全保障のために国際政治にコミットする必然性というものは高くは無く、いつでもその意思一つで国際政治への積極的コミットメントを控えるモンロー主義に戻りうるということである。特に米軍のトランスフォーメーションが進み機動力が増した今、アメリカが果たして東アジア地域でのプレゼンスを前にも増して必要としているのかといえば、そこには疑問が残る。

これらの国際政治環境を冷静に分析した上で、我々は日本の対米関係をどのようにするべきかを考えなくてはならない。もちろん日本は決してアメリカの属国ではないのは事実であり、アメリカに対して一定の主張をすべき時にはするべきであり、少しでも自らの立場を強くするよう努力しなくてはならないことは当然である。しかしながら、現段階で日本が一国で自国の安全を確保できるような軍備を持つことが現実的でない昨今の国内外の情勢を考えれば、日本としては当面は日米同盟の堅持を自ら積極的に行っていくより他に道はないのではないだろうか。

中国や北朝鮮の脅威がやや小康状態にあるように見えるからといって、日米同盟が緩むようなことがあれば、それは日本の国益の観点からは百害あって一理なしであるということは、第一次大戦後の日英同盟から四カ国条約に移行した経緯を振り返れば明らかである。テロ特措法の延長問題がどのようになるのかは今の段階では何ともいえないが、その議論を進めていくにあたっては国内政局の観点ではなく、国際情勢を冷静に分析し、日本国家の長期的な安全や地域の安定という観点から議論がなされなくてはならない。
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