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2021-04-20 21:10

(連載1)日本経済を襲うコロナ緩和マネー

倉西 雅子 政治学者
 イギリスの投資ファンドCVCによる東芝に対する買収提案は、日本国内に静かなる衝撃をもたらしました。事実上の買収断念のニュースも報じられていますが、これは非常に大きな意味を持つ経済動向です。日本の代表的な企業が外資の手に渡るという事態を前にして、これまで関心の薄かった人々もようやく事の重大さに気が付くに至り、現代の’黒船来航’の観もありました。日立製作所の子会社である日立金属も米投資ファンドのベイン・キャピタルと日本系の日本産業パートナーズを軸とする日米ファンド連合への売却も報じられています(日本産業パートナーズには、資本関係はないものの、米コンサルタントであるベイン・アンド・カンパニーも出資…)。
 
 日本国の産業の空洞化は今に始まったわけではなく、シャープや東芝の家電部門をはじめ、日本企業の多くは海外企業によって買収されています。これらの買収劇は、海外の同業者が事業規模の拡大を目的に行ったケースが多いのですが、今般の傾向にあって特徴となるのは、買い手の多くが海外ファンドである点です。
 
 海外投資ファンドとは、しばしば’ハゲタカ・ファンド’とも揶揄されてきたように、’安値で買い叩いて高値で売る’をモットーに活動する、利ザヤ狙いの強欲集団と見なされてきました。’餌食’となる日本企業にとりましては恐るべき存在なのですが、この時期に至り、海外の投資ファンドの活動が活発化してきている背景には、一体、何があるのでしょうか。
 
 推測されるのは、新型コロナウイルス禍の影響です。目下、国民や事業者等への給付金の支給を含めたコロナ対策費を調達するために、各国政府とも、巨額の国債を発行しています。大規模な財政出動によって赤字国債が積み上りますと、何れの政府も財政危機が懸念されることとなるのですが、同事態を回避するために、各国中央銀行は、公開オペレーションによる量的緩和策を実施しています。つまり、コロナ禍⇒政府の国債発行増額⇒民間金融機関による国債購入⇒中央銀行による民間金融機関からの保有債券・株式の買取⇒民間金融機関へのハイパワード・マネーの供給という回路により、各国の金融界には巨額の緩和マネーが流れ込んでいることとなります。(つづく)
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