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2021-03-12 10:00

(連載2)弾道ミサイルのプースト段階における迎撃

佐藤 有一 軍事評論家
 現在の日本には、北朝鮮の弾道ミサイルをブースト段階で迎撃する装備は何もありません。何も無いところから出発して、必要な装備・器材・迎撃システム・部隊組織・運用規則などを開発することができるか具体的に考えてみたいと思います。

 迎撃用UAVに必要な仕様・性能としては、赤外線センサーとレーダーを装備、30時間の連続飛行、高度15~20kmでの滞空飛行、ペイロード800kg(空対空ミサイルの重量が200kgとして4発を搭載)となります。この仕様・性能を満たすUAVは、米国の無人偵察機グローバルホークを改造して弾道ミサイル迎撃システムを開発・装備し、空対空ミサイルを搭載することによって実現できそうです。

 迎撃用の空対空ミサイルの仕様・性能は、射程距離200km、速度マッハ5、ロケットの推力偏向による飛行制御、赤外線とレーダーによる探知と追跡システム、指向性爆破弾頭となるでしょう。弾道ミサイルに対する迎撃はテストされていないようですが、米国の最新の空対空ミサイルAIM-260JATMはそれに近い性能を持っています。また。日本にも99式空対空ミサイル(改)AAM-4Bがあります。

 これらの空対空ミサイルを基にして、弾道ミサイルを追跡・誘導する制御システムを開発・搭載することにより、弾道ミサイルの迎撃が可能な空対空ミサイルを実現したいものです。たたき台となるUAVと空対空ミサイルは既に存在し、それを改造する目的・仕様は明確なのですから、開発計画を立案して適切な予算を割り当てることができれば実現可能性は充分あると思います。

 開発が進展して試作品が制作されたならば、北朝鮮の弾道ミサイルを模したミサイルを試験発射し、所定の空域で哨戒飛行をしている迎撃用UAVでそれを探知・追跡して迎撃する実機テストが必要になります。それによってブースト段階の迎撃が実用段階に達したかを確認できます。実機テストが成功して、迎撃用UAVの運用・指揮方法も含めたブースト段階の迎撃の構想が裏付けられ、具体的な配備計画まで進むことを期待します。

 迎撃用UAVの運用には通常の有人航空機とは異なる運航・管制上の問題があります。軍事用UAVといえども民間航空機が飛行する空域では、その管制に従わなければなりません。従ってその制約をできるだけ避けるためにも、民間航空機の運航飛行高度より高い15km以上の高度で巡航して目的の空域に移動し哨戒飛行できる能力が必要となります。このことから、迎撃用UAVを配備する基地は民間航空路からできるだけ離れた、北朝鮮に近い日本海に面した地域にある基地が適している思われます。

 迎撃用UAVは日本国内の基地からの遠隔操縦で飛行・迎撃をします。さらにそれに加えてシステム化されたプログラムによる自律飛行・自律迎撃の能力が必要となるでしょう。これによって、哨戒する空域への往復の巡航飛行や哨戒飛行コースの選択・運航などは自律飛行で行うことが許されるとしても、迎撃用の空対空ミサイルの発射を人が介在することなく、コンピュータが自律的に判断して指令してよいのかという問題が提起されるかもしれません。(つづく)
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