国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2021-01-26 20:23

(連載1)バイデン政権のバラマキ施策を憂う

岡本 裕明 海外事業経営者
 バイデン政権のバラマキが始まります。総額1.9兆ドル、約200兆円の経済対策を行いますが、内訳は家計部門が1兆ドル、コロナ対策が4150億ドル、企業や地域向けが4400億ドルなどとなっています。またイエレン次期財務長官は金利に関して「世界は変わった」とし、今のような超低金利なら金利負担は増加しないと述べています。この論理には、違和感があります。金利だけを返すわけではなく、いつか元本部分を返すのが健全な財政であるとすれば仮に金利がゼロであっても借り入れを起こすことは将来の負担増になることには変わりません。イエレン氏の発言は金利が低ければ債務不履行のリスクが少ないと言わんばかりに聞こえます。当然ながら、その点は共和党から激しく叩かれています。
 
 アメリカの連邦ベースの債務は27兆ドルでGDPの130%。その点、日本はGDP比で見れば世界でもダントツの266%(20年10月時点)なので大きなことは言えません。ただ、日本の場合はこじつけのようですが、国債債務残高と純債務では全然違う数字になります。これは日本が応分の資産も十分に持っているため、純債務では金融資産分だけを加味した場合、157%程度となり、更に金融資産以外のものを加味すれば100%は切ります。また、国債を概ね国内で消化していることから、4割以上を国外に依存するアメリカと一概に比較できないという見方もあります。しかしながら政府部門の支出が膨大である中、コロナ対策で更に債務増加が加速していることに「問題なし」とは言えないでしょう。
 
 話を戻しましょう。今回のバラマキには家計向けに1400㌦の追加現金給付金が含まれています。またアメリカには現在失業給付金を貰う人が1800万人います。今起きていることは所得の移し替えと一種のベーシックインカムプランに近い状態になっています。生活に苦しい人ほど今回3度目になるバラマキは効果的であります。但し、「一般的には」と一言付け加えなくてはいけないでしょう。この政策が意図せず生活苦の人々の労働市場からの実質退散を促しているからです。
 
 労働参加率をみるとアメリカでは2000年の頃が最大で67%をつけたのですが、その後漸減、コロナ前で63%程度でした。ところがコロナでこの参加率が崩落、20年4月には60.2%と先月から一気に2.4%ポイントも下げたのです。労働参加率はそんなに大きく数字が動くものではなく、これは驚異的な意味を持ちます。その後、持ち直したのですが、20年12月で61.5%と夏以降はほぼ同水準で推移しています。つまり、少なくとも1.5%程度の労働参加率の下押しとなっており、逆にそれが失業率の大きな回復の一因となっています。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム