国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-12-14 12:59

中国版「FEMA」応急管理部をめぐる現状

松本 修 国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
 久し振りに中国のネットを眺めたら12月9日、応急管理部HP上に訃報(中国語「訃告」)が出されていた。中身を確認して驚いた。応急管理部部長(同党委員会副書記)である王玉普が8日、治療の甲斐なく天津で亡くなった(享年64)というのである。小生のe-論壇「議論百出」のデビュー作「新型肺炎発生に関する中国の初期的対応への一考察」(2月2日付掲載)の問題意識は、中国の「危機管理」体制が何故、新型肺炎「COVID-19」への初期的対応でうまく機能しなかったのか、特に2018年新設された「司令塔」たる応急管理部の対応が全く確認できない理由を考察したかったからである。

 中国の資料を遡って調べてみると、今回亡くなった王部長の存在感は応急管理部発足以来、あまりにも薄く2019年11月末には「中国の応急管理システムと対処能力の整備」をテーマに中国共産党中央政治局集団学習会が開かれながら、これを受けて開催された応急管理部の党組織会議を主宰していた黄明副部長(同党委員会書記、前公安部副部長)が不在の王部長に代わって「危機管理」部門を実際に仕切っていたことが判明した(2月17日付拙稿参照)。そして、この傾向は「COVID-19」への爾後の対応でも変わることはなかった。今回の訃報の公表によって、王部長は昨年来病気療養中で活動不能であり、黄副部長が部長代行として活動していたことが漸く判明したのである。また、同訃報によると次週14日月曜日、王玉普部長の告別式が北京の八宝山葬儀場で行われるという。中国版「FEMA」(緊急事態管理庁)を意識して、国務院(政府)機構改革の一環として応急管理部新設を「敢行」した習近平、李克強ら中国要人の参列があるのか注目されよう。

 最後に「百家争鳴」欄に掲載された中山太郎氏の論稿「独断と偏見での日中関係史回顧」(12月9日付)を読んで小生は落胆した。英週刊誌「エコノミスト」最新号によると、欧米も中国を最大の競争相手と位置付け始めたが肝心の大学や研究機関での中国研究の人気がなく学習者も減りつつあり、この傾向は日本でも同じような状況であり「現在、中国を踏み込んで研究するのは、はなはだしく困難」というのである。「ドラゴン・スレーヤー」(龍の退治者、要は嫌中派)でも「パンダ・ハガー」(パンダ抱き着き者、要は親中派)でもどちらでも構わない、21世紀の国際関係の趨勢を左右する現代中国の動向を冷静、かつ情熱を持って観測・分析していく「チャイナ・ハンド」の登場を期待してやまないところである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム