国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-12-01 20:16

(連載1)バイデン政権誕生で日米関係は安定か

真田 幸光 大学教員
 私はへそ曲がりです。今回は、皆さまのご批判を覚悟で、一般とは、少し違う視点からの米国大統領選挙の評価をしてみたいと思います。私は、日本人として生まれ、日本国籍を持っていることをごく当たり前のこととして考えてきました。従って、日本の国家理念を意識して生活をしてきたことなどはこれまでありません。しかし、米国と言う国は、「1787年9月17日、現在のアメリカ合衆国憲法が起草された際から論じられてきた権利章典に基づく、多数の基本的な市民の権利および自由が保証されている国家であり、その精神を守る国民が存在している国である。米国に生きる国民は、こうした米国の理念を守ることを意識しており、言葉を変えて言えば、国民が常に国家を意識している国である。」と私は見ています。更に、「公正なるルールと制度に基づき、公正なるジャッジメントの下、生活していくことが保証されており、また、国民に対して均等にチャンスが与えられることも保証されている国家である。」とも考えています。そして、こうした考え方の下、「アンフェア」を極端に嫌い、アンフェアを正そうとする国民たちによって構成されている国家であるとも認識しています。
 
 こうした点からすると、選挙結果に異議を唱えるトランプ大統領は、「選挙そのものがアンフェアである。」と唱え、訴訟までしようとしている訳でありますから、まずは、トランプ大統領が正式に訴訟に出てくるのか否かを待つべきであると考えている国民もたくさんいると聞いており、こうした点からも、「アメリカ合衆国の正式な決定」を外国人である私たちは待つべきであり、まして、「トランプ大統領は往生際が悪い。」などと言った評価をしつつ、投票権のない私たち外国人が騒いではいけないとも私は考えています。
 
 さて、今回の米国の大統領選挙、今年2月の米国の失業率は3.5%と1969年以来の良い数字で完全雇用状態を創出、また、株価指数を中心とした金融指標も堅調に推移していたことから、既得権益層がトランプ大統領を批判する水準にもなかったこともあり、好調な経済状況を背景にトランプ大統領再選はほぼ間違いないと、トランプ大統領自身も考えていたでありましょうし、私もそのように見ていました。ところが、中国本土発の新型コロナウイルス感染拡大の中、状況が大きく変化していったのは、ご高尚の通りです。(こうしたことから、トランプ大統領が盛んに中国本土の責任を問う気持ちも私はよく分かります。)そこで、更に今回の米国大統領選挙を眺めていきたいと思います。私は、そもそも、米国は貧富の格差を主たる背景として、四年前の前回に続いて、米国社会そのものが、「二極化していた」中で実施された選挙である。と考えています。そして、「共和党・トランプ大統領は、大航海時代以降の既得権益層の既得権を壊して、新しい秩序を目指した大統領である」と私は見ております。
 
 一方、「民主党・バイデン候補は、トランプ政権によって、変えられつつあったこれまでの秩序に世界を戻し(Back to Normal秩序を元に戻そう)、大航海時代以降の既得権益層の権利を再び守ろうとしている大統領候補である」と私は考えています。そして、貧富の格差を背景とした現行の社会に対する不満を持つ勢力たちは、閉塞感のある現行の世界を変えてくれるとの期待を持たせるトランプ大統領を支持、今回もそのトランプ大統領を支持したと思います。こうした勢力はまた、バイデン候補では、二極化された現行の米国社会に融和を齎すどころか、むしろ、「二極化を固定化させていく可能性がある。」とも見ており、従って、バイデン候補が、「これからはブルーステートもレッドステートもなく、米国が一枚岩になって頑張ろう!」と呼びかけていることを、冷めた目で見ているとも私は聞いています。そして、トランプ大統領の差別発言問題によって、反トランプ大統領の姿勢を示すであろうと見られていた黒人系、ヒスパニック系、アジア系は、今回、四年前の前回よりも多くの票をトランプ大統領に集めていきました。そして、トランプ大統領はまた、「黒人に対する雇用拡大策」を提案するなど、きめ細かい政策姿勢を示しており、こうしたことも、黒人票を集める背景となったものと思います。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム