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2020-11-11 00:04

「QUAD」概念への疑問

松本 修 国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
 暫く論壇の行方を眺めていないと、いつの間にか知らない概念が打ち出され、さらに略語化されてしまい全く不分明な状態に置かれてしまう今日この頃である。それが「QUAD」(Quarter Dialogue)という概念である。そのまま英訳すれば「四鼎対話」(これも語義矛盾か)になるが、中身は日米豪印戦略対話である。その主眼は議論は多々あろうが、強固な中国包囲網の構築であると小生は思う。

 そして、最近の「百家争鳴」欄の中山太郎氏の論稿(11月2日、9日)で取り上げられているが、この「QUAD」とともに日米同盟、東南アジア諸国連合(ASEAN10)を活用した「ゆるやかな連携」を発展させた国際共同体「太平洋連合」(Pacific Union)構想を提起した北岡伸一氏の論説(11月1日付読売新聞「地球を読む:日本の外交政策」)が注目されている。

 しかし、インドを加えた「QUAD」概念に小生は疑問を抱かざるを得ない。当の北岡氏も「インドとの関係強化」を打ち出しながら「インドは巨大で独立独歩の国で、多国間の枠組みに収まりにくい」とし「日印2国間と、日米印豪の4か国、通称クワッドで進めていくべきだろう」と主張しており、「太平洋連合」(PU)構想の今後の進展には懸念があり、ブレーキがかかるのではなかろうか。

 また、小生が懸念するのが“インパール作戦の亡霊”とでも言うべき対インド幻想である。かつて第二次世界大戦中、膠着状態の戦局逆転のために「中国大陸打通」を目指してインド北部のインパール占領を目指した日本軍は惨敗した。インドの背後にいた英国の存在を軽視していたからである。あれから数十年経って、21世紀に入り再浮上した、「未来の超大国」インドを巻き込んだ「QUAD」概念はそもそも地政学上、全く無謀なものではないのか一考を要すると思う。それは近年、「地球儀俯瞰」外交とか「価値観共有」連携とか耳ざわりの良い概念に翻弄され過ぎ、真の「戦略的思考」から遠ざかった日本及び日本人への警鐘になると小生は考える。
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