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2020-10-20 15:12

(連載1)米大統領選と対中感情の奇妙な不一致

倉西 雅子 政治学者
 報道によりますと、来月3日に予定されているアメリカ大統領選挙の勝敗予測は、現職のトランプ大統領が劣勢な状況にあるそうです。民主党が擁立するバイデン候補の圧倒的な優勢を伝えるメディアが大半を占めるのですが、その一方で、同氏の親中派ともとられかねない言動を考えますと、バイデン候補の当選は、アメリカ国民にとりましては悲劇となるはずです。
 
 新型コロナウイルスのパンデミック化もあって、対中感情を問う世論調査では中国に対する感情は悪化の一途を辿っています。中国に対して悪感情を抱く率は過去最高を更新し続け、10月6日に公表された米国の大手調査会社ピュー・リサーチ・センターによって実施された世論調査の結果では、73%の人が否定的な回答を寄せています。同社が4月に実施した同様の世論調査の結果では66%でしたので、半年間で凡そ7%も反中率が増加したこととなります。
 
 今日、対中政策が大統領選挙における論点となるに至ったのは、中国が、もはや‘国外の問題’ではなくなったことによります。従来、アメリカ国民は、内政には強い関心を示しても、外政に対しては然程の関心を払っていないと指摘されてきました。しかしながら、グローバリズムが中国を軸として全世界に拡大するにつれ、アメリカの一般市民もまた、中国の影響から逃れなれなくなります。これまでは内政の領域に留まっていた失業問題なども、その主要な要因が、景気の一般的な変動ではなく、グローバリズムによる先進国の産業の空洞化に移るに至ると、中国問題は、アメリカ国民の生活と直接リンクするのです。前回の大統領選挙にあって、トランプ大統領が当選を果たしたのも、今まで水面下に隠れていた中国問題を政治の表舞台に引き上げ、アメリカ国民が新たな評価項目を見つけたからなのでしょう。
 
 かくして中国問題は、アメリカ国内にあって内部化されたのですが、中国の脅威は、経済分野に留まりません。30年後には中国の軍事力はアメリカを抜いて世界第一となる予測がある上に、今日にあっても、既に最先端の軍事技術においてはアメリカに優っている兵器も出現しております。また、中国は、‘超限戦’の名の下で、官民一体化した戦略で多方面同時攻撃の戦争を仕掛けてくるものと予測され、人道法や戦争法を誠実に順守するとも思えません。(つづく)
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