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2007-07-12 22:27

友誼長存

岩國哲人  衆議院議員
 平成2年(1990年)に中国の各地を訪問した時、当然のことながら西安市も訪れ、陝西省の国際部長の雷廷氏と会い、ごく一般的にだったが、古い歴史を持つ出雲市にとってふさわしい姉妹都市はどこだろうかと相談をした。漢中市という市があるが、どうだろうかという提案だった。歴史都市として有名な漢中は、外国人の立ち入りが禁止されていたが、その禁止も最近解除されたばかりだった。いわば箱入り娘ということだろうか。そういう過程を経て極めて順調に縁組が整い、調印式は翌年の91年の7月1日に、私が出かけて漢中市で行われることになった。

 漢中市はかつての唐の都、長安(いまの西安)の西南約200キロ、漢中地区一帯は西から東に流れる漢水(いまの漢江)の流域に展開している。漢、三国時代の史跡の宝庫であり、歴史は約2300年ほどさかのぼり、秦の恵文王13年(BC312年)のとき、漢中郡が置かれたのが、その始まりである。以来、守るに易く、攻めるに難い漢中は、歴代、覇王の拠るところとなり、「漢中を制するものは天下を制す」とまで言われた要衝の地であった。

 期待に胸ふくらませて漢中空港に降りると、そこには私たちを驚かせるような光景があった。小学生約百人の鼓笛隊と何枚もの赤い横断幕が張りめぐらされている。まさに「熱烈歓迎」一色の空港だった。小学生の奏でる音楽が漢中平野の広い空にひびき渡ってゆく。とりわけ私たちを喜ばせたのは、「有朋、自遠方来、不亦楽乎(友あり、遠方より来る、また楽しからずや)」の横断幕だった。遠方から調印のために訪れた私たちをいきなり「遠来の友」あつかいで迎えてくれた市長さんの心づかいと、市民の歓迎ぶりに感激し、長旅の疲れも吹っ飛んでしまった。秦嶺山脈の奥には貴重なトキ、パンダが生息し、金糸猴も保護されている。

 それからも毎年、市民の交流は今でも続き、出雲市高浜小学校の子供たちが卒業式には漢中市の木、キンモクセイを一本植える。そのキンモクセイの木は百年たてば百本の木、千年たてば千本の木となり、秋にはすばらしい中国の古都漢中の香りを出雲市内に漂わせてくれることだろう。そのキンモクセイの香りの中に、日本と中国の長い歴史が一つになって流れる…、出雲の子供たちと私の夢である。
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