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2020-07-28 17:05

敵基地攻撃能力は「自主防衛力の強化」に名称変更せよ

加藤 成一 元弁護士
 政府・自民党や、一部野党、マスコミ等において、「敵基地攻撃能力」保有の是非が活発に論議されている。こうした論議は、近年における中国の覇権主義的な軍備拡張や、深刻な「尖閣諸島問題」、さらに、核を放棄しない北朝鮮など、緊迫する北東アジアの安全保障環境の変化を考えると、日本の安全保障への国民的関心の喚起にとって有益と言えよう。
 
 「敵基地攻撃能力」の保有については、自民党の中からも船田元氏、前防衛大臣の岩屋毅氏など、有力政治家の間にも慎重論があり、マスコミ各社の世論調査を見ても、国民の間に反対意見が多いのが現状である。その最大の原因は、「敵基地攻撃能力」の保有により、日本が所謂「専守防衛」を放棄し、他国に「先制攻撃」を行うのではないかという懸念であろう。しかし、筆者が2020年7月20・21日付「百花斉放」掲載の拙稿「敵基地攻撃能力に慎重な船田元氏の見解に思う」でも詳述した通り、日本が十分な「敵基地攻撃能力」や「先制攻撃能力」を保有すれば、その強力な抑止力によって他国からの攻撃は抑止され、日本から敢えて先制攻撃を行う必要性はなくなるのである。即ち、「敵基地攻撃能力」は日本の抑止力を格段に向上させるのであり、「敵基地攻撃能力」保有の最大の目的とメリットは他国に対する先制攻撃ではなく、他国からのあらゆる攻撃の抑止に他ならないのである。
 
 したがって、日本政府が敢えて「敵基地攻撃能力」などと物騒な名称を付け、国民に「専守防衛」違反や「先制攻撃」の誤解を与え、中・ロ・韓国など、周辺国を警戒させる必要性は全くない。単に自衛のための「自主防衛力の強化」で十分である。なぜなら、自衛のための「自主防衛力の強化」には、敵基地攻撃に必要な、超高性能各種偵察衛星、超高性能レーダー基地、F―35ステルス戦闘機、超高性能レーダー搭載イージス艦、国産超音速対艦ミサイルASM-3、中長距離巡航ミサイル、多用途防衛型空母、宇宙空間・サイバー・電子戦略、レーザー・電磁波兵器なども含まれ、事実上「敵基地攻撃能力」を保有したと同様だからである。
 
 そのうえ、このような自衛のための「自主防衛力」の保有については、政府見解は勿論のこと、判例も否定していない。即ち、最高裁も、「憲法9条によって、我が国が主権国家として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、我が国の平和主義は、無防備、無抵抗を定めたものではない。9条1項は侵略戦争を放棄したものである」(砂川事件最高裁大法廷判決昭和34・12・16刑集13・13・3225)と判示し、自衛のための「自主防衛力」の保有を認めている。以上の次第で、「敵基地攻撃能力」の名称は、自衛のための「自主防衛力の強化」に名称を変更すべきことを政府・自民党に緊急提案する。
 
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