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2007-06-29 17:20

高速道路を「孝速道路」に

岩國哲人  衆議院議員
 経済の先進国とか民主主義のお手本といわれるアメリカ、イギリス、ドイツでは全国どこでも高速無料となっていることを見れば、道路を使う人から料金をとるという日本のやり方の方が異常だということがよくわかる。それでは、日本の歴史の中で今までずっと道路利用料をとっていたかというと、これがまるで違うのだ。律令制度下においては、交通路、交通施設は国家の経営で、その利用は無料を原則としていた。ところが中世になると、通行料を取りだした地域がある。国家財政の衰退に伴い、政治の乱れの中で、国費の一部を利用者に転嫁し、有料となったようだ。江戸時代になると幕府は道路を整備し、寛永十二年(1635年)に「武家諸法度」で通行料を禁止することにより、道路通行の原則無料が確立した。

 江戸時代には大小合わせて全国に53の関所があったが、すべて無料で通行できた。ただし、山の中では通行料金をとる人たちがいたらしく、それは山賊と呼ばれていた。もうそろそろ日本の道路族も、無料化を宣言して山賊とは違うということを明らかにすべきではないか。律令制度の時代、そして江戸幕府体制という、日本の歴史の中で比較的国家の法と政治が乱れていなかった時代には、道路は無料。法と政治が乱れた中世に、道路を使えば金を払えという思想が割り込んできた。律令と江戸を目指すべき近代国家日本が、今や中世のやり方と江戸の山賊の真似をしているようなものだ。

 高速無料化によって、日本列島の中で、最も付加価値の高い、いわば最もおいしい国土の背骨の部分が全国民のメニューとして開放されることになる。特に高失業率とミス・マッチに悩む若い世代にとっては、最も働きたくなるような場所が高速道路沿線部分であり、起業対策、雇用対策として極めて効果的である。若い人の職場を増やし、子供や孫の就職に悩んでいる祖父母や両親の心配を減らすことこそ、見方を変えれば国が高齢世代に対して実行できる最大の「親孝行」ではないか。職を求めて地方から大都市へ、そしてその職を守るためにはその都市に住み続けなければならない。2割の都市面積に、既に日本の人口の8割が住んでいる。職を求め、職を守るための都市化現象は止まらない。職を守るか、親を守るか、悩みは深刻だ。長寿化現象と都市化現象の同時進行に政治がいち早く手を打ち、「孝住共生型社会」を、高速道路という武器を使って実現させなければならない。

 車を余り運ばないで道路がラクをしている「道路にラクをさせる道楽」をこれからも続けていこうとするのか。それとも華道、茶道、書道などを楽しんできたように、日本人に「道を楽しませる道楽」を実現するのか、政治の手腕が注目される国会が開かれている。国を守り、人命を守り、親孝行のための介護の道を守り、若い世代の職を守るために高速道路を活用し、「孝速道路」に転換する、それこそが日本の親孝行の道ではないか。
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