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2020-01-22 19:17

(連載1)非核保有国こそNPT体制の議論を

倉西 雅子 政治学者
 核兵器禁止条約が採択されたことにより、核保有論は‘絶対悪’と見なされがちですが、筆者は、次善の策として全世界の諸国による核武装の可能性を認めています。全諸国核武装論は、核=絶対悪の固定概念を排して素直に国際社会を見つめれば、論理的で合理的であり、かつ、倫理的にも許される範囲にあるのではないかと思うのです。
 
 NPT体制が見直されるべき理由は2つあります。まず、ひとつはNPTから逸脱した国を引き戻すことができていないことです。イランがアメリカに対する報復措置として核開発の再開を表明し、北朝鮮も対米対決姿勢を強めています。アメリカが軍事制裁に踏み切らない限り、イランと北朝鮮の核保有は既成事実化されることでしょう。つまり、戦争を望まないならば、‘無法者国家’の核保有を黙認しなければならない、それが国際社会の現実です。
 
 “ならず者国家”への核拡散だけではありません。もうひとつは、NPTによって一部の国にのみ合法的な核保有が認められていることです。特に、大国である中国やロシアの核戦略は攻撃型であり、周辺諸国は常にこれらの核保有国による核の脅威にさらされています。例えば、アジアにおいて中国のみが核を合法的に保有する現状にあって、仮に、南シナ海に中国の核兵器が配備されたとすれば、どのような事態が起きるのでしょうか。南シナ海の軍事基地化は対米戦略の一環とされていますが、東南アジア全域のみならず、太平洋諸国に対する中国の核の脅威は格段に高まります。一方、中国の核の標的となる諸国は、NPT、および、加盟国であれば核兵器禁止条約の縛りがありますので、非核保有国が核抑止力を持つためには、核保有国と同盟する以外の道はありません。
 
 NPT体制を維持しながらこれらの問題を解決する方法はないわけではありません。それは、合法的な核保有国が分担して、すべての諸国に核の傘を提供する方法です。実際に、NPT体制において非核保有国である日本国も同盟国であるアメリカの核の傘の下にありますし、NATOではニュークリア・シェアリングも導入され、非核保有国に差された核の傘はその強度を増しています。(つづく)
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